研究課題/領域番号 |
24880030
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
高妻 篤史 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (20634471)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞外電子伝達 / 電気化学 / 代謝工学 / 遺伝子発現 / 物質生産 |
研究概要 |
研究計画調書に記した研究計画のうち,研究項目1 および2については以下に詳述するようにほぼ完了した。また研究項目3に関しても一定の成果を得た。 1. MR-1株のグルコース資化能力の活性化:本研究計画は電極との電子授受が可能な細菌Shewanella oneidensis MR-1株を使用して,電気化学制御により遺伝子発現および代謝活性をコントロールすることにより有機物原料からの有用物質生産効率を向上させることを目的としている。物質生産の基質としては安価かつ取り扱いやすい糖原料であるグルコースが望ましいが,MR-1株はグルコースを資化できないという課題があった。MR-1株がグルコースを資化できない理由はグルコースのトランスポーター(GalP)とリン酸化酵素(Glk)をコードする遺伝子を欠損しているためであると推定されたため,これらの遺伝子を含むプラスミドを作製し,MR-1株に導入した。その結果MR-1株にグルコース資化能力を付与することに成功した。 2. 酢酸合成遺伝子の破壊:有用物質の生産反応において副生成物となる酢酸の合成を抑制するため,MR-1株の酢酸合成遺伝子(pta)を相同性組換えにより破壊した変異株を作製した。本変異株は酢酸合成量が野生株の約50%程度まで低下していた。MR-1株はpta遺伝子以外にも酢酸の合成に関与すると推定される遺伝子 (acs) を有するため,pta破壊株においても酢酸合成能力が残存していると考えられる。したがって今後pta/acs二重破壊株を作製し,酢酸合成を完全に抑制することを計画している。 3. 細胞外電子伝達系遺伝子の発現制御機構の解明:MR-1株の細胞外電子伝達系遺伝子の転写単位および転写開始点を決定するため, RT-PCRおよびプライマーエクステンション解析を行った。その結果当該遺伝子領域のオペロン構造を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書記載の通り順調に研究計画を遂行することができた。研究の進展に伴い新たな課題も見出されたが,今後の研究により解決できると想定している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書に記載の通り研究を遂行する。電気化学制御を行うためのリアクター装置の作製は既に完了しており,予備的な実験を開始している。またHPLCおよびGC-MSによる代謝産物分析方法の確立も終了している。今後電気化学制御を行った際の代謝産物の変化についてデータを収集し,有用物質生産に最適な制御方法について条件検討を行う予定である。
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