研究概要 |
研究計画調書に記した研究計画のうち,今年度(平成25年度)は以下の研究項目(2~5)について実施した。 2. 酢酸合成遺伝子の破壊: 微生物電気化学システムにおいてMR-1株を物質生産菌株として利用する場合,酢酸等の副生成物の蓄積を抑制することが課題となる。MR-1株はpta, acsという2つの酢酸合成遺伝子を有しており,今年度はacsの遺伝子破壊株を作製した(pta破壊株は昨年度作成済み)。一方,MR-1株のグルコース代謝産物を解析した結果,酢酸以外にも乳酸が主要代謝産物として蓄積することが明らかとなった。従って酢酸合成遺伝に加え,乳酸合成遺伝子の破壊も行うことにより,さらなる生産収率の向上が可能であると考えられた。 3. 細胞外電子伝達系遺伝子の発現制御機構の解明: mtr遺伝子群のプロモーター領域を詳細に解析した結果,遺伝子発現の活性化および抑制に必要なDNA領域を同定した。また転写活性化領域にcAMP receptor protein (CRP) が結合することを示した。 4, 5. 電気化学制御リアクターの構築・電極電位設定の最適化: 電極電位の制御が可能な電気化学リアクターを構築し,MR-1株を様々な電極電位において培養した。その結果,代謝産物のプロファイル,特にD-/L-乳酸の蓄積バランスが電極電位の設定によって顕著に異なることが明らかとなった。また乳酸代謝系の遺伝子発現にも電位による変動が見られた。これにより電極電位によって遺伝子発現を制御し,代謝産物を変化させることが可能であることが明らかとなり,本研究のアプローチの有用性が示された。今後目的物質を蓄積させる方法について,遺伝子工学および電気化学的手法の両方向から検討を加えていく予定である。
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