研究概要 |
これまでの研究により、腸管上皮細胞に発現するCD40分子が、腸管上皮-T細胞間相互作用において重要な役割を果たし、大腸炎における炎症反応に加担していることを確認している。そこで、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性大腸炎モデルマウスにおける腸管上皮CD40分子発現変化を、real-time PCR、免疫染色、およびWestern blottingで解析した。コンベンショナル環境下で飼育したマウスにおいては、DSS投与により大腸上皮におけるCD40発現が増加したが、SPFおよび無菌環境下で飼育したマウスではDSS投与により大腸炎発症は認められたものの、CD40発現の増加は認められなかった。このことから、腸管上皮CD40分子の発現増加には、ある種の腸内細菌、もしくは菌代謝物濃度が関与していることが示唆された。現在、コンベンショナルおよびSPF環境下で飼育したマウスの腸内細菌および代謝物濃度の解析を進めている。 また、マウス腸管上皮様ptk6細胞を用いて上皮CD40分子の機能解析を行った。細胞をIFN-γで刺激後、CD40発現をreal-time PCRおよびWestern blottingで解析した結果、ptk6細胞においてCD40分子の発現増加が認められた。そこで、CD40発現増加したptk6細胞をCD40 agonist抗体で刺激し、腸管バリア機能の変化を評価した。その結果、CD40 agonist抗体の刺激により、経上皮電気抵抗値が有意に増加した。また、ZO-1, Occludin, Claudinsなどのtight junctionタンパク質の発現量および局在を解析した結果、CD40 agonist抗体刺激により、Claudin-4の局在が顕著に変化した。これらの結果から、上皮CD40はT細胞との相互作用だけでなく、腸管のバリア機能にも関与することが示唆された。
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