ナラ枯れの媒介者である“太平洋型”のナガキクイムシ(以下、“太平洋型”)について、坑道(巣)壁における微生物群集構造を明らかにした。 和歌山県白浜市にコナラの丸太を囮木として設置し、ナガキクイムシを穿孔させた。これを割材し、穿孔したナガキクイムシ6頭および蛹室(2検体)と水平坑道(4検体)の坑道片を切り出した。 分子生物学的手法によって穿孔虫の種を推定したところ、主として日本海側で発生しているナラ枯れの媒介者であるカシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)とは分子系統学的にかけ離れていることが確認できた。蛹室(2検体)と水平坑道(4検体)は、①希釈平板法(培養法)による菌類群集の解析、および②次世代シーケンサーを用いた微生物群集解析(非培養法)に供試した。希釈平板法によって、“太平洋型”の坑道の菌類群集は、カシナガのものと酷似したものであることが判った。すなわち、Ambrosiozyma kashinagacola(旧名Candida kashinagacola)と未同定の子嚢菌系酵母Candida sp.の2種が優占しており、ナラ菌Raffaelea quercivoraと併せた3種が6検体全てから分離された。また、菌類群集に関しては、次世代シーケンサーを用いた培養を介さない手法によっても同様の結果が得られた。上述の6検体は、次世代シーケンサーを用いた原核微生物の群集解析にも供試した。その結果、6検体全てからActinomyces sp.とみられる放線菌の配列が検出された。加えて、γ-プロテオバクテリアと考えられるバクテリアも検出された。
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