研究課題/領域番号 |
24880035
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
加藤 創一郎 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究員 (30597787)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 微生物 / メタン生成 / 酢酸 / 共培養 / アンモニア阻害 / 高圧力 |
研究概要 |
本研究では、異なる2つの酢酸分解メタン生成経路(単独型、共生型)に対し高濃度アンモニア、および高圧力がどのような影響を及ぼすのかを、各経路を触媒する代表的な菌株の純粋培養、共培養を使用して調べている。 高濃度アンモニアによるメタン生成阻害の研究では、各微生物の培養実験の結果、単独型のメタン生成が顕著にアンモニア阻害に弱いことを見出した。さらに単独型のメタン生成菌に対し詳細な培養実験、および遺伝子発現解析を行うことで、(1)細胞内pHホメオスタシスの崩壊、(2)メタン生成酵素群の直接的な阻害、(3)細胞内酸化ストレスの上昇、といった様々な要因がアンモニア阻害により引き起こされることが明らかとなった。以上の結果に関しては現在投稿論文を作成中である。 高圧力がメタン生成に及ぼす影響の研究に関しては、各微生物種の純粋培養を高い静水圧力(~15MPa、150気圧相当)で培養を行えるシステムの構築に成功し、メタン生成が高圧力下でも進行しうることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アンモニア阻害の実験に関しては、当初の計画以上に実験が進展した。各微生物種の純粋培養、共培養条件でのアンモニア阻害の定量評価、および特に阻害体制の低い微生物についての遺伝子発現解析を行い、アンモニア阻害のメカニズムについて深い洞察を得ることができた。今後は得られた成果の対外発表を行う予定である。 高圧実験に関しては、初年度の目標であった高水圧下培養システムの構築、並びに高圧下での微生物の増殖、メタン生成の確認に関して達成することができた。次年度は当初の予定通り、高圧下での各微生物の共培養と各メタン生成経路の活性の定量、高圧下での各微生物の遺伝子発現変化の解析を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
1.アンモニア阻害軽減法の開発 高アンモニア含有嫌気廃水処理においては、しばしばゼオライトなどのカチオン吸着材がアンモニア阻害の軽減を目的として用いられている。吸着材の使用はアンモニア阻害軽減に一定の成果を示しているが、実際のリアクターを対象とした実験では数多くのカチオン吸着材を比較する実験、吸着の最適条件を探る実験をおこなうのは困難である。一方、本研究で用いているモデル共生系は小スケール・ハイスループットな培養実験が可能である。そこで本研究では、各種カチオン吸着材(ゼオライト、アンデサイト等)を高アンモニア培養系に添加し、微生物の増殖およびメタン生成への影響を評価し、効果的なアンモニア阻害軽減法の創出を目指す。 2.高圧力がメタン生成微生物に与える影響の評価 各微生物を0.1 MPa(大気圧下に相当)~15 MPaの静水圧下で培養し、生育・代謝産物の測定をおこない、増殖速度を算出、圧力による影響を定量的に評価する。また遺伝子発現解析を行い、高圧条件下でどのような遺伝子が発現するのかを調べる。さらにモデル共生系の培養、炭素同位体実験、定量PCR、蛍光顕微鏡観察をおこない、共生条件下における圧力の影響を評価する。
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