研究概要 |
申請者は概日時計の中枢である視交叉上核における神経細胞間のリズムカップリングと時計遺伝子Cryptochrome(Cry)の関連を生後発達という観点で研究を行った。Cry1, Cry2を欠損した(CryDKO)マウスの視交叉上核は生後初期には同期した概日リズムが認められるが、離乳する生後21日付近で脱同調する(小野らNature Communicationsに2013年に発表)。また外界の光環境はもっとも強い同調因子であり、生後初期の光環境変化が概日システムを変化させることも知られている。そこでまず野生型(WT)とCryDKOマウスを生後1日から恒常明に暴露し、4週間後に離乳し行動量を赤外線センサーにて測定した。光環境は離乳後3週間まで恒常明を続け、その後恒常暗に移行させた。生後明暗サイクルで飼育したCryDKOマウスは恒常暗環境下に移行しても行動リズムはみとめられない。しかしながら生後直後に恒常明に暴露されたCryDKOマウスは、恒常暗に移行すると行動リズムが認められ、出現した行動リズムは異なる周期成分を含むことが明らかとなった(小野らPLOS ONEに2013年に発表)。これらの結果は生後初期の恒常明が何らかの形でCRYの機能を補完していると考えられる。 次に生後発達に伴う細胞間カップリングの因子について研究を進めた。視交叉上核には複数の神経ペプチドが発現しているが、その中でもVIPは細胞間カップリングに重要な因子として知られている。そこで、CryDKOマウスとVIPレセプターであるVPAC2の欠損マウスを掛け合わせ、生後初期におけるCryDKOマウス視交叉上核の細胞間カップリングにおけるVIPシグナリングの役割を検討した。現在これらの結果を解析している最中である。
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