動脈硬化の臨床画像診断において、動脈硬化の根幹的原因である動脈内のプラークの不安定性を高精度に診断することが求められており、不安定プラークを特異的検出可能な分子プローブの開発が切望されている。そこで本研究では、動脈硬化病変のプロテオミクス解 析により、不安定動脈硬化プラーク関連生体分子として新たに同定された生体内タンパク質に対する新規SPECT用分子イメージング剤(99mTc-HVPA)を創製し、不安定動脈硬化プラークの診断に適した核医学分子イメージング法の確立を目指すこととした。本目的の達 成を目指し、平成25年度は以下の検討を行った。 1)新規同定タンパク質の動脈硬化病変内発現評価:プロテオミクス解析により動脈硬化病変進行と相関して発現量が増加することが示唆されたFatty Acid-Binding Protein 5(FABP5)について、動脈硬化モデルマウス大動脈を用いてFABP5の動脈硬化病変内での発現量・局在変化について評価した。その結果、FAPB5は病変形成中期-後期であるType IV(AHA分類)病変にて高い発現を示すと共に、その発現局在はマクロファージ陽性領域と高い相関を示すことを認めた。 2)新規SPECT用分子イメージングプローブの創製・評価:平成24年度に作製したThrombospondin 4(TSP4)を標的とした新規SPECT用分子イメージング剤(99mTc-HVPA)について、TSP4に対して高い親和性を保持すると共に、マウス血漿中にて添加48時間まで高い安定性を有すること見出した。さらに、動脈硬化モデルマウス大動脈起始部を用いたin vitro ARG検討より99mTc-HVPAは動脈硬化病変に集積することが示唆された。以上の結果より99mTc-HVPAは不安定プラークを特異的検出可能な分子プローブに求められる基礎的性質を有することが示唆された。
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