当研究は前骨芽細胞ネットワークにおける破骨細胞前駆細胞の分化及び成熟に関する種々の骨代謝ホルモンの影響に対する解析を目的とした。解析をするにあたり、実験動物骨破壊モデルを用いて実際の生体内の骨代謝環境を模倣した。骨代謝に関わる前骨芽細胞ネットワークの複雑性を理解するには生体を模倣した骨破壊(代謝)モデルは重要なサンプルであった。ヒト乳癌細胞を免疫不全モデルマウスに投与し、下肢骨等に種々の様相を呈した骨破壊像を作成することができ、同部位を用いて、免疫組織化学的手法及び分生物学的手法を駆使し、目的とする項目を解析した。骨破壊部位は軟エックス線で確認し、その後実験動物を固定後、パラフィン包埋、薄切後にTRAP及びALPの免疫染色を行った。骨破壊部位では骨代謝に関わる種々のホルモンが産生されており、TRAPならびにALPの両因子ともにその発現が亢進し、骨代謝が非常に活発であることが示された。さらには骨破壊を示す下肢骨を凍結し、同部位よりRNAを抽出後、遺伝子解析を行った。TRAP及びALPは免疫染色と同様の結果を示した。今回の研究では骨代謝に関わる細胞の一つである骨細胞にも注目した。骨細胞は骨に最も多く存在する細胞であるが、骨破壊部位においては骨細胞は形態学的には萎縮したような像を示し、骨細胞産生因子であるSOST及びFGF23の発現が優位に低下していた。以上のことから骨代謝にかかわる種々のホルモンの影響により前骨芽細胞群、破骨細胞、ならびに骨細胞に影響を及ぼすことが強く示唆された。さらに、組織染色像から前骨芽細胞系細胞、破骨細胞、骨細胞の位置的関係や状況を検索することができ、3者は密接に連携を取り、各々の状況に応じた骨代謝を行っていることが示唆された。
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