研究概要 |
われわれは,通常酸素分圧下で高濃度の血管新生因子が含まれる血管内皮培地を用いて,腫瘍組織から腫瘍血管内皮細胞の分離・培養を行い,その異常性を確認してきた.そこで腫瘍組織が低酸素, 低栄養になっており, 腫瘍血管新生において既存の血管が腫瘍内まで萌出してくることを踏まえ, 市販されているヒト正常血管内皮細胞(Human Dermal Microvascular Endothelial Cell: HMVEC) を用い, ①酸素濃度②培養時間③培地の組成などを検討し, 低酸素条件で実験を行った. 1)低酸素環境でおこりうる血管内皮細胞の応答モデル:通常酸素状態と低酸素培養器(アステック社製)を用い低酸素状態(1%O2, 5%O2, 10%O2)を設定し,HMVEC を培養し, 低酸素状態の時間、培地の条件などを検討し, 1%O2での血管内皮細胞の増殖を確認した. 2)上記の培養条件においての細胞の表現型の解析 血管内皮細胞の増殖能(proliferation assay): 正常酸素状態, 低酸素状態それぞれの条件において血管内皮細胞を培養し, 細胞数を測定し, 増殖能を比較した.その結果, 増殖に有為差のない期間を見いだした. 3)表現型の変化に伴う遺伝子発現の変化の解析による新たなTEC マーカー候補分子の探索 Real Time PCR 法により我々が過去に行ったマイクロアレイ解析によって正常血管内皮に比べ,腫瘍血管内皮で発現が亢進,あるいは抑制しているいくつかの分子が,低酸素培養下のHMVEC で発現が亢進していることを見いだした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究目的である, 低酸素環境で血管内皮細胞が増殖できる条件を設定することができた.また, 得られた条件を基に細胞培養を行い予定通り増殖能の検討, 並びに遺伝子発現の変化を検討する事ができた. さらに, それらの結果を検討し腫瘍血管内皮細胞と正常血管内皮細胞, 低酸素環境における血管内皮細胞を比較して得られた結果をまとめ, 学会で報告することが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り, 引き続き低酸素環境に置ける血管内皮細胞の変化について検討する. また, 低酸素環境と活性酸素の関連を検討する. 並行して, 当教室ならびに研究協力先である歯学研究科口腔病理学講座のスタッフ, 医学研究科腫瘍外科のスタッフとの継続的なミーティングを行い, 実験や研究経過の検討並びに再計画を行っていく.
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