申請者らは平成24年度第5回研究活動スタート支援により、新たにスライスパッチクランプ法に用いる機材および試薬、実験動物等を得ることができた。申請書に記載した実験計画に基づき研究を進めた結果、以下の新たな知見が得られた。 1.アミリン受容ニューロンの神経経路:迷走神経中枢端の終末部にはアミリン受容体が存在しないか、セロトニン感受性がない神経線維のみに存在している可能性が示唆された。視床下部へ上行性に投射している最後野ニューロンに対してシナプス接続する他のニューロンの終末部にのみアミリン受容体が存在する可能性がある。また、悪心嘔吐に関与する神経経路とは別経路であることが示唆された。 2.アミリン受容体を標的とした意図的摂食調節の可能性:摂食調節におけるアミリンの作用機序は視床下部とは別の経路で作用している可能性があり、内因性アミリンの動態によって最後野ニューロンが摂食調節に関わる機序は所謂fail-safe deviceとしての生理学的意義を有する可能性が示唆された。 これらの得られた研究結果の報告は、神経生理学分野において国際的に著明な雑誌であるBrain Research誌に2013年2月に掲載された。一方国内においても、現在平成24年度北海道歯学会賞の受賞が決定しており、2013年5月10日に受賞者講演を行う予定である。 このたびの研究成果により、ホルモンなどのさまざまな因子が関与し未だ明らかになっていない複雑な摂食調節メカニズムについての新たな知見が得られ、国際的に報告することが出来た。今後は本研究結果を踏まえ、創薬等の臨床応用を視野に入れた摂食調節についての中枢メカニズム解明が期待される。
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