研究課題/領域番号 |
24890011
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉川 和人 北海道大学, 大学病院, 医員 (00637267)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | p53 / 口腔癌 / 浸潤 / 転移 / 優性阻害性変異 / バイオマーカー / 個別化医療 |
研究概要 |
酵母・大腸菌シャトルベクターpSS16にコーディング領域全長入った形で保存されているヒトTP53変異体R248Q、R248WおよびR273Hを哺乳動物細胞発現プラスミドベクターpIRES-AcGFP1に組み換え、これらの塩基配列が正しいことを確認した。R248QおよびR248W変異体発現ベクターは、TP53遺伝子を欠失しているヒト肺癌細胞株H1299にトランスフェクションし、GFP陽性細胞集団をFACSで選別・回収した。 ヒト口腔扁平上皮癌細胞株5系(SAS、Ca9-22、HSC-2、HSC-3、HSC-4)のTP53遺伝子の変異を酵母p53機能アッセイで同定した。その結果、SASはE336X(recessive)、Ca9-22はR248W(dominant-negative)、HSC-2は225 5G ins(recessive)、HSC-3は360 4b ins(recessive)、およびHSC-4はR248Q(dominant-negative)の変異を有していることがわかった。また、これら5系の細胞増殖、運動、浸潤能を解析した。 変異TP53遺伝子をノックダウンすることを目的にTP53mRNAを標的としたshort hairpin RNA(shRNA)発現ベクターを作製した。このベクターをCa9-22細胞にトランスフェクションし、TP53shRNA発現細胞をGFPを目標にFACSで選別・回収した(Ca9-22-shTP53)。Ca9-22-shTP53細胞から蛋白を抽出してWestern blot法でp53蛋白の発現を解析したところ、p53蛋白の発現阻害が確認されなかった。Ca9-22細胞では、shRNAがsiRNAにプロセッシングされる過程に障害がある可能性が考えられ、shRNAでなく直接siRNAで細胞内に導入する戦略の優位性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
優性阻害性変異TP53を強制的に発現させたH1299細胞株を樹立することができた。また、変異型TP53遺伝子の発現を阻害する方法論も試行錯誤の末、方向性が見えてきており、現在実施に取りかかる状況である。腫瘍細胞生物学的なアッセイについても障害なく遂行することができた。ただし、優性阻害性変位TP53発現細胞株については、研究期間が約半年と短かったこともあり、予定していた株数には到達することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、できるだけ多くの優性阻害性変異TP53強制発現株の樹立に努める。ただし、酵母・大腸菌シャトルベクターpSS16にクローニングしていた変異TP53遺伝子を哺乳動物細胞発現ベクターに組み換える方法だけでなく、すでに得られた野生型TP53発現ベクターを鋳型としたsite-directed mutagenesisを駆使して多種の優性阻害性変異TP53強制発現ベクターを作製する戦略もとりたい。 平成24年度の結果から、優性阻害性変異TP53強制発現細胞の腫瘍生物学的性状の解析にあたっては、まず細胞増殖と細胞浸潤アッセイを行い、そこで変化が見られたものについて細胞運動・細胞接着アッセイを行う方が効率的と考えられたので、今後はその方策で進みたい。
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