研究課題/領域番号 |
24890015
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金子 寛 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80635558)
|
研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
|
キーワード | 転写因子 / 遺伝子発現制御 / GATA転写因子 / 細胞分化 / トランスジェニックマウス / ノックアウトマウス |
研究概要 |
造血系転写因子GATA1は赤血球・巨核球分化に必須の遺伝子群の発現を包括的に制御しており、近年はダウン症関連急性巨核芽球性白血病の関連因子としても注目されている。ダウン症関連急性巨核芽球性白血病では、GATA1遺伝子に体細胞性変異が生じて、アミノ末端側転写活性化部位が欠失した変異体GATA1-sが発現する。しかし、この遺伝子変異とダウン症関連急性巨核芽球性白血病発症との関連性は不明である。 これまでに申請者は、GATA1はアミノ末端以外にカルボキシル末端にも転写活性化部位をもつことを明らかにした。これらの転写活性化部位は異なる性質を有することから、両転写活性化部位が制御する標的遺伝子群は異なると考えられるが、詳細は不明であった。そこで、両転写活性化部位が個体内において制御する遺伝子群を規定するため、アミノ末端側の転写活性化部位を欠失したΔNT-GATA1とカルボキシル末端側の転写活性化部位を欠失したΔCT-GATA1を発現する遺伝子改変マウスを作出し、胎仔肝組織を用いたマイクロアレイ解析を行った。結果、GATA1の標的遺伝子は、アミノ末端側転写活性化部位依存的、カルボキシル末端側転写活性化部位依存的、そして両転写活性化部位依存的な遺伝子群に分類されることが明らかとなった。 これまでの成果は、GATA1標的遺伝子群のうち、アミノ末端側転写活性化部位による制御を受ける遺伝子群の発現異常、つまり不均衡な転写制御状態がダウン症関連急性巨核芽球性白血病の発症に関与することを示唆しており、発症機構の解明につながる重要な知見だと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、ΔNT-GATA1またはΔCT-GATA1を発現する遺伝子改変マウス胎仔を用いてマイクロアレイ解析を実施した。これにより、GATA1標的遺伝子群には、アミノ末端側転写活性化部位またはカルボキシル末端側転写活性化部位特異的な制御を受ける遺伝子群が存在することを明らかにした。 また、各転写活性化部位と相互作用する転写複合体及び共役因子の解析に関しては、各転写活性化部位を欠失させたGATA1変異体ΔNT-GATA1とΔCT-GATA1を安定発現する血球細胞株を樹立するなど、予定通り解析系を確立させた。 以上より、本研究計画は概ね予定通りの進展だと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度は、マウス個体レベルでのマイクロアレイ解析を行うことで、各転写活性化部位に着目したGATA1の標的遺伝子の分類を明らかにした。今後は、このような制御機構の分子基盤に解明するべく、各転写活性化部位と選択的に相互作用する転写複合体や共役因子の同定に注力する。 具体的には、樹立した内在性GATA1と同程度に外来性GATA1、ΔNT-GATA1、ΔCT-GATA1を発現する血球系培養細胞株を用いて、GATA1と相互作用する因子の同定を行う。このような転写複合体や共役因子は、クロマチン上のGATA1の局在または転写因子GATA1の転写活性に影響する可能性が示唆される。そこで、樹立した各細胞株を用いてChIP-seq解析を実施し、各転写活性化部位特異的に相互作用する因子によって、クロマチン上のGATA1局在が変化するか検証する。さらに、同定した因子のクロマチン免疫沈降実験も行う。これら解析結果を先のマイクロアレイ解析から抽出された遺伝子群と比較することで、GATA1標的遺伝子の発現制御における転写活性化部位特異的な因子の重要性を考察する。 また、ダウン症関連急性巨核芽球性白血病におけるGATA1の遺伝子発現制御の捩れの点から、昨年度に引き続き、ΔNTRとΔCTRマウスのコホート解析を行い、発現制御不均衡により引き起こされる病態を考察する。
|