GATA1は、赤血球・巨核球分化に重要な遺伝子群の発現を制御する。さらに近年は、ダウン症関連急性巨核芽球性白血病(DS-AMkL)の発症関連因子として着目される。申請者は、このGATA1の転写制御に係る分子機構の解明を目指し、研究を行った。これまでの解析から、GATA1のカルボキシル末端に新規転写活性化部位(C-TAD)を見出していた。 酸性アミノ酸に富むアミノ末端転写活性化部位(N-TAD)と異なり、C-TADは極性アミノ酸の割合が多い。一般的に、TADは一次構造の違いによって分類され、それぞれ異なる転写複合体をリクルートすると考えられている。これより、GATA1に存在する異質な二つのTADは、異なる転写複合体を介してそれぞれ独自の標的遺伝子群を制御すると仮設をたて、解析を行った。平成24年度に実施したマイクロアレイ解析の詳細な解析から、GATA1の標的遺伝子群はN-TAD依存的、C-TAD依存的、さらに両TAD依存的な遺伝子群に大別されることが分かっていた。 本年度は更なる詳細な解析から、N-TAD依存的な遺伝子群には、ヘム合成遺伝子群、アミノ酸代謝遺伝子群、そしてグルタチオン代謝遺伝子群が含まれていた。細胞内の抗酸化因子であるグルタチオンの代謝遺伝子群がN-TAD欠失に影響されることは興味深く、以前に、N-TAD欠失GATA1変異体を発現するマウス胎仔肝細胞では活性酸素種が蓄積することを見出していた。さらに、DS-AMkLで必発するGATA1遺伝子変異がN-TAD欠失を欠失させることと、DS-AMkL白血病細胞ではROSレベルが高いことを考慮すると、GATA1を介したROS制御の破綻がDS-AMkLの病態に寄与する可能性が示唆される。
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