叢生は顎骨と歯のサイズの不調和によってもたらされることから、歯の大きさを制御できれば、叢生の発現を抑制することが可能となる。一方、最近、上皮細胞と間葉細胞を高密度で区画化し歯胚を再構築する器官原基法が開発され、器官原基法による再生歯作製技術はほぼ完成したといえるが、再生歯のサイズの矮小、形態の不揃いといった問題が残されている。IGF-Iはインシュリンに類似した構造と機能をもつ増殖因子であり、種々の臓器の発生・成長に重要に関わる。FukunagaらはIGF-I投与の妖精症患者で歯のサイズが増大することを報告しており、IGF-Iは歯の形態制御においても重要に関わることが予測されるが、歯の形態形成に及ぼすIGF-Iの役割はこれまで全く明らかにされていない。本研究では、歯の形態形成におけるIGF-Iの発現、分布、機能を系統的に解析し、歯の形態制御におけるIGF-Iの関与を明らかにする。本年度は、発生歯胚および器官原基法によって再構築された再生歯胚に対するIGF-I添加の影響を検討した。発生歯胚に対するIGF-Iの影響を解析するため、胎齢14.5日のC57BL/6マウス胎仔の下顎臼歯歯胚を摘出、IGF-Iを添加して器官培養し、位相差顕微鏡で観察した。その結果、IGF-I添加によって歯の長径および歯冠の長径の増大が認められた。再生歯胚に対するIGF-Iの影響については、胎齢14.5日のC57BL/6マウス胎仔の下顎臼歯歯胚由来の歯胚上皮細胞と歯胚間葉細胞を器官原基法によって再構築して再生歯胚を作製し、IGF-Iを添加してサイズの増大について解析した。その結果、IGF-Iを添加して器官培養した再生歯胚は歯の長径、歯冠の長径および幅径が増大した。
|