研究課題
本研究では、低分子量G蛋白質Arf6の腫瘍血管新生および癌細胞の転移・浸潤への関与ついて、これら両者の現象におけるArf6の分子機能メカニズムを解明し、Arf6シグナル伝達系を標的とした腫瘍血管新生および癌細胞の転移・浸潤の両者を阻害する新規の革新的抗癌剤の開発を目指す。B16メラノーマ細胞およびルイス肺癌細胞をマウス皮下に移植し、腫瘍の増大および腫瘍血管形成を解析したところ、血管内皮細胞特異的Arf6-KOマウスにおいて、腫瘍血管新生が抑制され、腫瘍の増大が阻害された。そこで、血管内皮細胞におけるArf6の機能を解析するために、ポリオーマmT抗原により初代血管内皮細胞を不死化し、コントロールおよびArf6-KO血管内皮細胞を用いてin vitro血管形成実験(チューブ形成実験および大動脈リングアッセイ)を行った。腫瘍血管形成は、VEGFやbFGF、HGFなどの様々な血管誘導因子によって制御されるが、Arf6-KO血管内皮細胞では、これらの血管誘導因子のうち、HGF依存的に誘導される血管形成が特異的に抑制されることを見出した。また、Arf6-KO血管内皮細胞では、コントロール細胞に比べてHGF依存的な細胞遊走が抑制されていた。さらに、血管内皮細胞において、HGF刺激によってArf6が活性化されること、およびArf6の活性化はHGF依存的な接着斑の形成に必要であることを明らかにした。ヒト腫瘍においても、HGF依存的な腫瘍血管形成は、腫瘍の増大に重要であることが示されており、腫瘍血管新生においてVEGFシグナル伝達経路を担保することが示唆されている。そのため、HGFシグナル伝達系を制御するArf6は、血管新生阻害剤の標的となり得ると考えられる。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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