研究課題/領域番号 |
24890030
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
嶋田 昌子 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30637369)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / ナノテクノロジー |
研究概要 |
平成24年度は、主に、動脈硬化誘発食を負荷中の高脂血症、動脈硬化モデルマウスに4級化ポリアミンナノゲルを1日1回経口投与し、4級化ポリアミンナノゲルによるLDL低下およびHDL上昇作用は動脈硬化の発症・進展を抑制することの基礎データーを確立した。 (1) 高脂血症マウスを作製する為にC57BL/6Jマウスに、また、動脈硬化モデルマウスであるApoE欠損および LDL受容体欠損マウスそれぞれに動脈硬化誘発食(脂肪10.5%、コレステロール1.25%、コール酸0.5%)を8週間自由摂取させた。 (2) 動脈硬化誘発食投与開始1週間後より、同誘発食を自由摂取させながら生理食塩水または4級化ポリアミンナノゲル(0.25g/kg BW)を1日1回経口投与した。 (3) 2週間ごとに採血を行い、総コレステロールおよびHDL―Cを酵素法にて、カイロミクロン、VLDL、LDL、HDL値をHPLC法にて測定する。この解析により、4級化ポリアミンナノゲルによるLDL低下およびHDL上昇作用を確認した。また便中の胆汁酸および脂質含量、血中トリグリセリド値や血糖値も同時に測定し、胆汁酸吸着剤としての効果と胆汁酸代謝への影響を検討した。 (4) 動脈硬化病変の評価:上記のマウスから大動脈を摘出し、大動脈全体および起始部の脂肪染色および免疫組織化学染色を行い、動脈硬化病変を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
食餌性および遺伝的高脂血症動物モデルにおいて、4級化ポリアミンナノゲル投与が悪玉コレステロールであるLDLコレステロールを低下させ、善玉コレステロールであるHDLコレステロールを上昇させること、さらに動脈硬化病変の形成を抑制する表現型を明らかにする基礎的検討がなされた。これらの研究結果をもとに、次年度はさらにモデル動物のサンプル数を増やして統計学的有意さを確立していく。また、当初の計画に基づき、HDLコレステロール上昇のメカニズムの検討を行う段階へ移行することになる。便中の胆汁酸および脂質含量、血中トリグリセリド値の測定に関しては、実験上の手技を含めもう少し検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、まず、食餌性および遺伝的高脂血症動物モデルにおいて、4級化ポリアミンナノゲル投与が悪玉コレステロールであるLDLコレステロールを低下させ、善玉コレステロールであるHDLコレステロールを上昇させること、動脈硬化病変の形成を抑制する表現型をさらにサンプル数を増やして統計学的有意さを確立する。さらに、当初の計画に基づき、HDLコレステロール上昇のメカニズムの解明の検討を行う。4級化ポリアミンナノゲルが直接作用する小腸、胆汁酸・コレステロール代謝の中心臓器である肝臓、HDLのクリアランスに関与する腎臓における胆汁酸およびコレステロール代謝関連因子の変化を遺伝子発現および蛋白レベルで解析する。またリポ蛋白代謝、コレステロール代謝に影響を与えるホルモンの変化も解析する。小腸では、胆汁酸の吸収・代謝に関与するFXR、FGF15、コレステロール吸収に関与するNiemann-Pick disease, type C-like 1、HDL粒子の新生に関与するABCA1、ApoA1の遺伝子と蛋白発現を解析し、新規ナノゲルの作用を検証する。肝臓では、胆汁酸の代謝および合成系、HDL代謝酵素、HDL受容体について、その遺伝子と蛋白発現を解析し、新規ナノゲルの作用を検証する。HDL合成に関与するApoA1 mRNA、ABCA1蛋白の発現上昇、HDL異化に関わるhepatic lipaseの mRNA発現減少のあること、肝臓でのカルシウムチャンネル、 S100g カルシウム結合蛋白ファミリーのmRNA発現の上昇がみられたことに関しては、発現異常のみられるABCA1等のHDL制御タンパク質の合成、分解系をそれぞれmRNAおよび蛋白レベルで検討し、HDL上昇の分子機序を検索する。腎臓では腎近位尿細管上皮細胞の HDL受容体 cubilin の発現をmRNAおよび蛋白レベルで検討する。
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