研究課題/領域番号 |
24890031
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
加藤 愛章 筑波大学, 医学医療系, 講師 (90635608)
|
研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
|
キーワード | 胎児 / 新生児 / 心磁図 / 心電図 / 心拍変動解析 |
研究概要 |
【方法】心磁計測装置(㈱日立テクノロジーズ社製MC-6400)を用い胎児心磁図を記録された健常胎児135例(在胎25.3~37.3週)を対象とした。母体心磁情報を除去した後に、胎児心磁情報を抽出し、連続240秒の心拍変動解析を行った。時間領域解析と高速フーリエ変換を用いた周波数領域解析を行い、以下の周波数帯を設定し、在胎週数とパワースペクトル密度の変化を解析した。1)成人の解析で一般的に用いられるultra-low-frequency (ULF) 0.00~0.005 Hz、very-low-frequency (VLF) 0.005~0.04 Hz、low-frequency (LF) 0.04~0.15 Hz、 high frequency (HF) 0.15~0.40 Hz、total frequency (TF) 0.00~0.40 Hzの5領域。2)0.00~1.00 Hzの範囲を0.05Hz単位で均等に分けた20領域。 【結果】周波数領域解析では、LF、HFを含む0.00~0.90 Hzの範囲で在胎週数とともにパワースペクトル密度が増加した。HFで明らかなピークを示す症例はほとんどなく、LF/HFは在胎週数で明らかな変化はなかった。時間領域解析では、心拍間隔の標準偏差 (SDNN)、連続した心拍間隔の差の二乗平均平方根 (rMSSD)が在胎週数とともに増加した。 【結論】本研究において、成人領域で通常用いられる周波数帯よりも高い周波数帯にかけて、在胎週数とともパワースペクトル密度が増加することが示された。また、成人領域で用いられるHFにおいては多くの胎児でパワースペクトル密度でピークを有さないことが示され、自律神経活動を反映する特定の周波数帯は成人と胎児では異なると推測された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
健常な胎児での心拍変動の在胎週数での変化について後方視的な検討を進めることはできたが、自律神経系に異常を来す可能性の高い中枢神経疾患、胎児発育遅延、先天性心疾患の心拍変動について解析が進んでいない。 H24年度の検討により、健常な胎児のパワースペクトル密度の分布パターンが成人のものと異なっており、特に通常用いられるHFの範囲でピークがみられなかった。より高い周波数域でピークがあるという報告もあり、高い周波数帯での変化について検討を要する。健常胎児での分布のパターンを確立するために、現在、高い周波数帯について追加の解析を行っている。その後に疾患のある胎児においての心拍変動解析を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は健常胎児の心拍変動解析結果の比較として、①健常新生児の心拍変動解析、②疾患を有する胎児・新生児での心拍変動解析を行い、各疾患群毎で出生後の予後との関係を検討し、心拍変動解析でのリスク因子を検討する。さらに、疾患のある胎児においてリスク毎で管理を変えることで予後が改善するかを前方視的に検討する予定である。 ①当院に導入されている呼吸心拍モニタリングシステム(PHILIPS社製)を介して得られた正常新生児の心電図のR波の情報を用いる。当院では年間に約800例の新生児が出生しているが、正常新生児で呼吸心拍モニタリングされる症例は一部のみであるが、年間約100例で心電情報を取得できると予測される。240秒以上連続で記録された心電図情報をコンピュータに取り込み、R波を検出し、H24年度に導入した心拍変動解析ソフトを用いて時間領域解析と周波数領域解析を行う。新生児は出生直後から呼吸、心拍状態の変動が時間単位でも大きく変動することが予測される。呼吸心拍モニターにより呼吸数も同時に記録されるため、心拍変動への呼吸の影響についても同時に検討する。以上から、胎児から新生児期にかけての正常な個体での心拍変動解析の各種指標の正常値が確立される。 ②また、胎児診断により疾患を有することが判っている胎児について、連続的に胎児期には胎児心磁図による心拍変動解析、新生児期には心電図による心拍変動解析を行う。当院に導入されている心磁計(MC-6400、日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、胎児心磁図を記録する。目標症例数は中枢神経疾患が30例、胎児発育遅延40例、先天性心疾患30例。疾患群毎で出生後の予後と心拍変動解析の各種指標について検討し、リスク因子を検討する。
|