【目的】胎児心磁図を用いた心拍変動解析が疾患を有する胎児の予後予測に有用かを検討した。【方法】先天性心疾患胎児37例で57回、抗SS-A抗体陽性母体の胎児33例で65回、心磁計測装置(日立ハイテクノロジーズ社製MC-6400)を用い240連続のRR間隔を記録し、時間領域解析、周波数領域解析を行った。周波数帯をVLF(0.02-0.08 Hz)、LF(0.08-0.2 Hz)、HF(0.4-1.7 Hz)に設定してパワーを算出し、それらの比であるVLF/LF、VLF/HF、LF/HFも算出した。前年度までに得られた正常胎児164例における在胎週数毎での各種指標と、疾患を有する胎児の各種指標を比較した。【結果】正常胎児の平均RR間隔は416±24 ms、SDNN 14.4±6.5 ms、RMSSD 5.7±2.9 msであった。平均RR間隔、SDNN、RMSSD、いずれの周波数帯のパワーも在胎週数と有意な正の相関関係にあった(p<0.05)。先天性心疾患胎児において、胎児期に心不全を呈していたEbstein奇形の1例以外の胎児の各指標は、おおむね正常胎児から得られた95%予測区間内にあった。胎児心不全を来していたEbstein奇形の症例は生後間もなく死亡した。原疾患により生後から心不全を来した症例は胎児期の心拍変動解析には明らかな異常はなかった。抗SS-A抗体陽性母体の胎児では明らかな房室ブロック、洞性徐脈を来した症例はなく、心拍変動に明らかな異常を来した症例はなかった。【結論】出生後の重症化を心拍変動解析で予測することは困難だが、胎児心不全の評価に心拍変動解析が有用である可能性がある。
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