本研究は、「がん」と診断された患者について早期からの緩和ケア診療の介入を促し、適切な診療を行うためのデータベースである緩和ケア情報システム(Palliative Care Information System; PCIS)を新規に構築することを目的とするものである。その2年間の研究実施計画のうち、H24年度の計画は(1) 緩和ケア診療での必要診療情報の抽出を行う、(2) 緩和ケア診療の他に、将来のがん登録を見越した必要診療情報の抽出を行う、というものであり、その結果を受けて、H25年度は(3)PCISのデザイン作成、(4) 診療端末情報(Hospital Information System ; HIS)からPCISへの自動登録、(5)PCISに入力した内容を統計処理できるようなデザインを作る、(6) 作成したPCISの試験的導入、を予定した。 H25年度の実際の成果として、まず(3)PCISのデザイン作成を行った。それを基に、(4)HISからPCISへの自動登録を試みた。しかしながら、当施設ではHIS情報を他の情報システムで利用することについては困難であった。例えば当施設でのがん登録においても、必要データはHISを見ながら数人が手入力している状況であり、施設全体でその方策を検討しているところである。HISとPCISの連携には時間がかかることが判明した。そのため、当初の予定を変更し、HISを利用しない形でのPCISの作成を行うことにした。具体的には、緩和ケア診療に携わる緩和ケアチームのメンバー(医師、看護師、薬剤師、臨床心理士)がそれぞれタブレット端末を持ち、各病棟での診療で得た情報をそこにデータとして集約することでデータベースを作成する形とした。今後HIS情報を自動的にPCISで利用できるように引き続き働きかけることで、PCISを介したがん登録が可能となると考えられる。
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