研究概要 |
RET過剰発現による肺がんにおける発がん・がんの増殖・薬剤抵抗性への影響を解明し,RETを阻害する分子標的薬の対象となる症例を明らかにするとともに,実臨床においてそのような症例を見つけ出す検査法を開発することである. 本年度計画していた①EGFR変異のあるヒト肺がん細胞株に,正常RET・新規スプライシングバリアント(以下SV)を強制発現させ,EGFR阻害薬の耐性化が起こるかを検討するため,a)レンチウイルスを作成し,b)EGFR変異陽性のヒト肺がん細胞株 NCI-H1650, HCC827, HCC4006と,変異陰性のA549, NCI-H23に対し,強制発現株を得た.c)遺伝子導入細胞株におけるEGFR阻害薬gefitinib及びEGFR/RET阻害薬vandetanibのIC50(50% inhibitory concentration)を求めた.IC50の比をとることで,過剰発現株においてはvandetanibの法がgefitinibに対して相対的に効きやすいことが示された.これは,裏を返せばRET過剰発現によりRET阻害薬で可逆的なgefitinibに対する耐性が獲得されて鋳ることを示している. 生存曲線からもRET過剰発現の肺がん症例でEGFR陽性の場合のみ予後が不良となっていた.これは,EGFR-TKIへの耐性ないしは耐性獲得への寄与が示唆されており,これが細胞株レベルでも示されたと考えられる. 今後当初予定通り,下流シグナルの検討を行う.また,tissue micro arrayによる免疫染色のデータとの比較検討を行うことで,より臨床応用しやすい免疫染色による判定が可能かどうかを検討していく.
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