平成25年度は、まず骨細胞培養系の最適化検討を進めた。平成24年度には、コラーゲン包埋による骨細胞培養系を確立したが、後の詳細な解析により、1週間程度の長期培養により、骨芽細胞細胞のマーカー分子であるALPの発現上昇など骨芽細胞系細胞への脱分化兆候が認められた。そこで、長期間骨細胞の形質を維持可能な培養系の再確立およびコラーゲン培養系との比較を行った。生体内においては、骨基質中に埋没している骨細胞は、ハバース管をを介して種々の成長因子・ホルモンなどが供給される環境にもある。そこで、三次元培養可能で、種々の成長因子等を含むマトリゲル中での包埋培養を試みた。その結果、初代骨細胞単離後1週間にわたり、後期骨細胞マーカー分子あるSOST、FGF23の発現は十分に高値を維持することが確認された。また、マトリゲル中の各種成長因子含有量を低下させた基剤を用いて包埋培養した際には、後期骨細胞マーカーの発現低下が認められた。以上のことから、マトリゲル中に含有される成分により、骨細胞の形質維持が可能となることが示唆された。そこで、マトリゲル包埋条件下においてRANKL局在制御を確認したところ、コRANKLはOPG依存的にリソソームへ輸送されること、骨細胞の架足を通じて破骨細胞を活性化させることも確認され、コラーゲン培養により得られたコラーゲン培養下における結果と同様であった。続いて、小胞輸送制御分子Slp2-aが骨細胞内RANKLのリソソームから細胞表面に輸送される可能性をコラーゲン培養により見出したため、その生理的影響を評価した。Slp2-a全身ノックアウトマウスでは、若干の骨密度上昇傾向が観察されSlp2-aを介する骨細胞内RANKL輸送が生理的に寄与している可能性も想定されたが、その差は微弱であったため、Slp2-a単一分子による制御ではなく、補完的に機能する分子も存在すると考えられた。
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