生体内において免疫応答は微生物を代表とする体外異物への防御反応である。また免疫応答に付随し、生体内では血管拡張や血管透過性の亢進、腫脹や疼痛が引き起こされる「炎症応答」が起こる。免疫・炎症応答の制御破綻は様々な疾患に関与しており、炎症応答の制御機構解明は炎症疾患の新規治療法の開発に繋がる可能性がある。炎症応答の制御に中心的な役割を持つ分子として免疫系細胞から分泌されるサイトカインが存在するが、その遺伝子発現調節機構には未知の部分が多く残されている。 本研究ではTranscription Activator-Like protein (TAL)を利用したTargeted Chromatin IPによりサイトカインの遺伝子発現制御に関わる転写因子群を網羅的にプロテオソーム解析できる手法を確立し、その技術を利用することで炎症応答の制御機構の解明を目指す。平成24年度においてはIL-12のサブユニットであるp40の上流遺伝子配列に結合するTranscription Activator-Like protein (TAL)コンストラクトを作製し、ヒト単球系培養細胞に遺伝子導入し、安定発現株の作製を行った。その結果、作製したTALは複数のリピート配列は持つために安定発現株では遺伝子組み換えによって全長TALがほぼ認められないことがわかった。そこでTAL自身のコンストラクトのデザインを再考するべきであると判断し、平成25年度にサイレンス変異の導入によりリピート配列の影響を減らした改変型TALを作製した。改変型TALは確かに安定発現株において全長の発現が確認されており、改変型TALでのChromatin IPの条件検討を進め、p40の上流遺伝子配列を特異的に濃縮することに成功した。
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