研究課題/領域番号 |
24890061
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
和田 敬広 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10632317)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 歯科材料 / 生体材料 / 歯科理工学 / 表面分析 / X線吸収微細構造 / XAFS |
研究概要 |
歯質と歯科医療に用いられる歯科材料の金属、セラミックス等を結びつけるには歯科用接着(合着)材が用いられており、強固で耐久性のある接着を得るには、歯質/接着材の界面の情報が極めて重要である。しかしながら、従来の手法では破壊が伴いかつ原子・分子レベルでの分析には至っていない。本研究では、X線光電子分光法、走査型電子顕微鏡、フーリエ変換赤外分光法 全反射測定法などの一般的な表面・界面分析に加え、物質の特定原子の電子状態、周辺原子の種類、配位数、結合距離が分かるX線吸収微細構造(XAFS)、その中でも表面敏感な手法である全反射法、転換電子収量法やマイクロビームを用いて、歯科用各種接着材と歯質(材料)界面を非破壊で原子・分子レベルで分析し、接着材、歯質(材料)それぞれの界面情報を得て、接着材/歯質の結合状態を評価し、接着力向上のための知見を得ることを試みる。 平成24年度は、接着材と歯質界面の試料選定とX線光電子分光法(XPS)、走査型電子顕微鏡(SEM)などの一般的な表面・界面分析をおこない、モデルケースとして歯質の主成分であるハイドロキシアパタイトと歯科用接着剤の一部であるポリアクリル酸の分析を行った。その結果、ポリアクリル酸のカルボキシル基とハイドロキシアパタイトのカルシウムが結合を示唆する結果が得られた。また、X線吸収微細構造(XAFS法)の実験を行うため、高エネルギー加速器研究機構放射光共同利用施設(KEK-PF)の共同利用申請を行い、課題が採択され平成25年度から実験を行える予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、接着材と歯質界面の試料選定とX線光電子分光法(XPS)、走査型電子顕微鏡(SEM)などの一般的な表面・界面分析をおこなった。その結果、接着材と歯質界面は試料表面からナノオーダーだけではなく、マイクロオーダーに広がり、その範囲に適した分析も必要不可欠であると分かった。そのため、X線吸収微細構造(XAFS)の測定に当初の予定にはなかったX線を集光させた約50マイクロメートル径のマイクロビームを用いる手法を検討し、既に他の研究で使用させていただき技術を習得した。また、本研究でX線吸収微細構造(XAFS法)の実験を行うための高エネルギー加速器研究機構放射光共同利用施設(KEK-PF)の共同利用申請を行い、課題が採択され平成25年度から実験が行える予定であり、おおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はXAFS法での分析を主として行う。接着材と歯質界面の接着機構を解明するには界面が重要であり、その界面は数 ナノメートルオーダーから数百 マイクロメートルオーダーと幅が広い。そこで本研究ではXAFS法の中でも表面敏感性の異なる手法を組み合わせて行う。数ナノメートルオーダーでは全反射法を用いる。全反射法は平らな表面のサンプルに低角度でX線を当て全反射させることで行う。X線はサンプル表面(~数ナノメートル)での情報のみが得られる。全反射法よりも内部である数十 ~ 数百 ナノメートルオーダーでは転換電子収量法を行う。転換電子収量法はX線を試料に当てた時に発生するオージェ電子をシグナルとする。よって、オージェ電子の試料内での飛距離(数十 ~ 数百 ナノメートル)の情報が得られる。数十 マイクロメートルオーダー以上ではX線を数十マイクロメートルのスポットに集光したマイクロビームを表面から内部にあたるように試料を走査することによって測定を行う。すでにポリキャピラリーを用いて 約50マイクロメートル径のスポットサイズまで集光できることが確認できている。また、KEK-PFで秋に使用可能になるBL15Aでは約10マイクロメートル径のマイクロビームが使用可能なことや自分も参加している研究で開発している入射側検出側の二つのポリキャピラリーを共焦点条件にすることで三次元マッピングを取れるようになる手法などを研究の進捗状態に合わせて臨機応変に取り入れていくつもりである。 以上の結果を組みあせて、数ナノメートル~数百ナノメートルオーダーの情報を得て、最終的に接着材と歯質の界面に含まれるCaはなにと結合しているか?どのような状態か?どのような状態の相がどう分布しているか?を調べ、接着機構の解明、接着力向上のための知見を得ることを試みる。
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