研究課題/領域番号 |
24890062
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
清水 康広 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (60631968)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 咬合異常 |
研究概要 |
歯科臨床において、咬合異常により全身症状を訴える患者は多い。近年、動物実験において、咬合異常が副腎皮質ホルモンであるグルココルチコイドを増加させることが報告された。グルココルチコイドの過剰分泌は、成長期および成人の両時期において骨量を減少させる。本研究では、咬合異常が副腎皮質ホルモンならびに骨密度に与える影響を明らかにする目的のもと、実験を行った。実験動物としては成長期に当たる5週齢のC57BL/6 miceを用い、咬合異常モデルは先行研究を参考に、上下顎切歯にレジンを築盛することで作成した。咬合異常付与後、血中のグルココルチコイドは有意に増加していた。また、咬合異常付与により、1週間後の長管骨(脛骨および大腿骨)の骨密度(pQCT: 末梢骨用定量的CTを用いて測定)は有意に減少し、骨の強度指標 (Strength Strain Index: SSI) は有意に減少していた。今回の実験は国内外で未だ行われておらず、その内容で第11回日本歯科骨粗鬆症研究会学術大会 (2013年3月)にて発表を行ったところ、日本歯科骨粗鬆症研究会学術大会学術奨励賞を受賞し、その独創性および着想力の高さが評価された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過剰のステロイド(グルココルチコイド)は骨粗鬆症を引き起こし、ステロイド性骨粗鬆症は成長期における骨粗鬆症の代表的な病態である。成長期のステロイド系抗炎症薬使用患者においては、骨折や成長障害が重篤な問題とされている中、近年、成長期において咬合異常がストレスを引き起こし、グルココルチコイドを増加させることが報告された。本研究では、咬合異常が副腎皮質ホルモンならびに骨密度に与える影響を明らかにする目的のもと、実験を行った。それまでに咬合異常マウスモデルは存在しておらず、今回、過去の文献を参考に、実験モデルを確立することに成功した。過去の報告通り、咬合異常付与後、血中のグルココルチコイドは有意に増加していた。また、咬合異常付与により、1週間後の長管骨の骨密度および骨の強度指標は有意に減少しており、骨の脆弱化が認められた。今年度に導き出したデータで、第11回日本歯科骨粗鬆症研究会学術大会 において、学術奨励賞が受賞された。
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今後の研究の推進方策 |
研究は極めて順調であり、まずは、過去の文献 (Neuroscience Letters. 2009, 2011)を参考に、咬合異常マウスモデルを確立することに成功した。そして過去の報告通り、咬合異常付与後に血中のグルココルチコイドの有意な増加が確認された。 本課題の仮説通り、末梢骨用定量的CTを用いて測定したところ、脛骨および大腿骨の骨密度は低下しており、今後は、マイクロCTを用いて3次元微細構造の変化を確認してゆくとともに、椎骨などの他の骨を対象にさらなる実験を進めてゆく予定である。 現在のところ、研究を遂行する上での問題は、特に生じていない状況である。
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