研究課題/領域番号 |
24890066
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
南原 弘美 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (00632168)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | Wnt5a / 歯周病 / P. gingivalis |
研究概要 |
歯周炎はグラム陰性細菌感染による慢性炎症性疾患であり、支持組織の喪失と歯槽骨吸収を引き起こす。Wntは組織の分化・発生と深く関わっている糖タンパクとして基礎研究が発展してきた。近年、心臓血管疾患・リウマチ・敗血症などの研究において炎症性の組織破壊にもWntシグナルが重要な働きを担っていることが明らかとなった。過去に歯周炎とWnt5a遺伝子発現の関与について示した報告はなく、また単球におけるLPS誘導のWnt5a遺伝子発現の分子メカニズムについて報告したグループは少ない。我々はこれまでに歯周炎組織におけるWnt5a mRNA発現を示し、さらにヒト単球系細胞THP-1におけるP. gingivalis LPS刺激によりNF-κBシグナルを介して Wnt5a mRNAが発現し、STAT1との相乗作用により増強することを報告した。P. gingivalis LPSはTLR2リガンドとして作用し、Wnt5a発現にはNF-κBの他MAPK・PI3Kなど多岐にわたる分子メカニズムが存在していることが考えられる。そこで本研究では、歯周病原細菌P. gingivalisによるWnt5a遺伝子の発現調節分子メカニズムを詳細に検討し、さらに発現されたWnt5aが他の歯周組織細胞にどのような影響を与えているのかを検討することにより、歯周炎疾患進行における新たな炎症メカニズムの解析を目指すことを目的とした。 ヒト単球系細胞THP-1を用いて、PI3K/Akt/mTOR特異的インヒビター、ルシフェラーゼレポーターアッセイおよびウエスタンブロットにより、PI3K/Akt/mTORを抑制することにより、NF-κB活性が変化することが示された。P. gingivalisによるWnt5a発現は、NF-κBおよびPI3K/Akt/mTORのクロストークによることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
P. gingivalis LPS刺激によるTLR下流のシグナル伝達は相互作用を行うことによりWnt5aを発現させるという仮説を立て、平成24年度の実験計画を以下のように提案した。 ①PI3K/Akt/mTOR、MAPKおよびSTATの各種阻害剤を用いてシグナル伝達を抑制し、歯周病原細菌刺激因子P. gingivalis LPSにて刺激を行い、Wnt5a mRNA発現変化をReal time RT-PCR法にて解析する。 ②各阻害剤によりシグナル伝達を抑制し、P. gingivlais LPSにて刺激培養後、細胞内タンパク質を抽出する。ウエスタンブロッティングによりMyD88・TRAF6・IKKα/β・IκBαの細胞内タンパク量を測定、ソフトウェアを用いて定量し、その変化量を解析することにより、各シグナルがNF-κB経路に及ぼす影響を検討する。 以上の実験から得られた結果を基にして、THP-1細胞におけるNF-κB経路と他のシグナル伝達経路とのクロストークを解析し、PI3K/Akt/mTORシグナルがNF-κB経路に影響をおよぼすことを示すことができた。 さらに、得られた結果を取りまとめ近日中に学会発表を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
Wnt5aはnon-canonical pathwayを刺激し、IL-6、IL-8、IL-1β、MIP-1βのような炎症性サイトカイン産生を増強する。Tリンパ球および単球/マクロファージ細胞表面上にはWnt5a受容体であるFz5およびROR2が発現していることが 報告されており、細菌刺激により産生されたWnt5aやサイトカインはT細胞を含む単核球に作用すると考えられる。以上のことより、歯周炎局所で発現したWnt5aは単球/マクロファージおよびTリンパ球に作用し、炎症の持続や歯槽骨を含む組織破壊を誘発するという仮説を立てた。本研究では、歯周病原細菌刺激により産生されたWnt5aの歯周組織への影響について明らかにする為に、歯周組織構成細胞(単球/マクロファージ・Tリンパ球など)へのWnt5aの影響をサイトカイン産生の変化をELISA法およびReal-time RT-PCR法を用いて比較検討し、解析する。これにより、Wnt5aによるオートクライン/パラクラインの炎症関与経路を明らかとする。
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