神経性無食欲症者の脳脊髄液では炎症性サイトカイン(IL-1、TNF-α)が増加している。これらの脳内での産生は主に活性化ミクログリアが担っている。しかし神経性無食欲症者脳内のミクログリアに関する死後脳研究は報告されていない。近年ポジトロン断層法(PET)により、生体脳での活性化ミクログリアのイメージングが可能となった。そこで、本研究では活性化ミクログリアに特異的かつ高感度な新規トレーサー11C-DPA713を用いて脳内ミクログリア活性と臨床症状との関連を検討し、脳病態を明らかにすることを目的とした。 まず11C-DPA713において、健常者10名(平均年齢21.5±2.1歳)に対して動脈採血が必要な解析方法と動脈採血が不要な解析方法の相関を検討した。結果、両者に有意に強い正相関(r=0.897)が確認されたので、動脈採血が不要な解析方法、すなわち被験者に低侵襲な方法が行える事を確認した。また活性化ミクログリアの既存トレーサーである11C-PK11195の健常者13名(平均年齢21.5±2.0歳)の測定結果と比較して11C-DPA713の有用性を確認した。その上で11C-DPA713によるPET測定を神経性無食欲症者9名(平均年齢25.9±6.3歳、平均BMI13.7±1.1kg/m2)と健常者3名(平均年齢29.0±4.3歳、平均BMI19.6±2.2kg/m2)に行った。その結果、帯状回や視床などでミクログリア活性が認められた。 これらの結果を踏まえ、今後は対象例数を増やし、十分な例数による群間比較によって活性化ミクログリアと臨床症状との関連を検討し、神経性無食欲症での脳内免疫反応過程と症状形成の関係を明らかにする。更に平成26年より若手研究Bの補助を受けられる事になった為、神経性無食欲症で報告されている脳内セロトニン系の異常と活性化ミクログリアとの関連を検討していく。
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