研究課題/領域番号 |
24890085
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
林 由美 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30632707)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 胎生期低栄養 / グルコース / DEHP |
研究概要 |
胎生期DEHP曝露は仔の生存数減少と母親の低栄養を引き起こすことから、仔も低栄養状態であることが考えられる。そこで、仔の主なエネルギー源であるグルコース濃度を測定した。胎生期DEHP曝露は、胎仔期のヒト型PPARα0.05%曝露群、新生仔期の野生型0.05%および0.1%曝露群でコントロール群に比べ有意に減少させた。そこで、仔のグルコース濃度に関与している因子を測定した。グルコース供給源として母親の血漿中グルコース濃度を測定したところ、DEHP曝露による影響は認められなかった。次に、グルコース輸送に関与する因子として、胎盤のグルコース輸送タンパク(GLUT1およびGLUT3)を測定した。GLUT1はヒト型PPARαの0.05%曝露群で上昇し、GLUT3はPparα-nullの0.05%曝露群で減少したが、この結果から胎仔・新生仔のグルコース濃度低下のメカニズムを明らかにすることはできなかった。グルコース消費に関する因子として褐色脂肪細胞のUCP1およびPPARγを測定した。胎仔・新生仔ともにDEHP曝露による影響は見られなかった。 以上の結果から、胎生期DEHP曝露は胎仔・新生仔のグルコース濃度を減少させ、低栄養を引き起こしていることが示唆された。しかしながら、グルコースの供給・代謝・輸送に影響は見られず、DEHP曝露によるグルコース濃度減少のメカニズムについては明らかに出来なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
仔の血清量が非常に少ないことからアミノ酸およびトリグリセライドの測定は行なっていないが、仔の主な栄養源であるグルコースを測定し、DEHP曝露により仔の低栄養が引き起こされることが明らかになった。また、そのメカニズムについて検討するため、グルコース供給(母親のグルコース濃度)、輸送(胎盤のグルコース輸送タンパク発現量)、代謝(褐色脂肪細胞のUCP1およびPPARγ発現量)に関連する因子の測定も行なった。しかし、グルコース減少メカニズムは明らかになっておらず、今後検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
胎生期DEHP曝露は仔の血中グルコース濃度を減少させ、低栄養状態を引き起こすことが示唆された。グルコースは脳の重要な栄養源であることから、成長後の脳への影響として視床下部の摂食行動、海馬の記憶・学習に関して検討する。摂食行動に関しては、摂食調節に関わっている視床下部のAdenylate kinase、glycogen phosphorylaseおよびその関連遺伝子の発現量を測定し、離乳後の摂食行動促進メカニズムについて検討する。海馬における記憶・学習に関しては、GABAやグルタミン酸などの神経伝達物質やそのレセプターを測定する。これまでに測定を行なった摂食調節因子であるレプチンや視床下部のNeuropeptide Yの結果も踏まえ、胎生期DEHP曝露による低栄養環境が成長後の脳に与える影響、特に摂食行動と記憶・学習行動について明らかにする。また、PPARαとの関わりおよび種差について明らかにする。
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