炎症性腸疾患(IBD)は、一部の原発性免疫不全症においてIBDと類似した慢性腸管炎症が発症することから、炎症性疾患に免疫異常の関与が想定されている。iNKT細胞やMAIT細胞と呼ばれる自然免疫系のTリンパ球が粘膜免疫に重要な役割を果たしていることが知られるており、またこれらの細胞は自己免疫疾患の病態と関わることが報告されている。今回IBDにおけるiNKT細胞またはMAIT細胞の関連を解明すべく、その解析を行った。IBD患者156人 (潰瘍性大腸炎 88人、クローン病 68人)と、健常者57人を対象とし、末梢血iNKT細胞数またはMAIT細胞数およびそれらCD3+細胞比の比較を行った。結果、年齢等補正した多変量解析にて血中MAIT数およびMAIT/CD3比はIBD患者が健常者と比較し有意な低下を認めた。一方、MAIT細胞と疾患病勢との相関関係は認められず、またiNKT細胞の有意性はIBD患者において認められなかった。MAIT細胞減少の病態・意義を解明すべく、潰瘍性大腸炎患者の大腸病変部(n=5)とクローン病患者の小腸病変部(n=10)のMAIT細胞の解析を行った。これまでヒト腸管におけるMAIT細胞の詳細な解析はされていなかったが、MAIT細胞は陰窩に局在することが判明した。さらに潰瘍性大腸炎患者の大腸粘膜、およびクローン病患者の小腸粘膜における一陰窩あたりのMAIT数はコントロールと比較し有意な低下を認めた。さらにIBD患者では末梢血中MAIT細胞のカスパーゼ活性は健常人に比し有意に上昇しており、MAIT細胞の減少にはそのアポトーシス亢進に関与している可能性が示唆された。以上の結果からIBDの病態とMAIT細胞の動態に相関があることが明らかになり、IBDにおけるMAIT細胞のさらなる解析を行うことがIBDの原因・病態解明、治療法の開発に貢献する可能性が示唆された。
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