研究課題/領域番号 |
24890102
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 剛史 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (80636994)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 核酸医薬 / 糖部架橋型人工核酸 / ホスホロチオアート / 体内動態 / ターンオーバー / アンチセンス医薬 |
研究概要 |
本研究ではアンチセンス医薬の薬効を高めるような革新的分子デザイン法の開発を目指すことを目的としている。本年度においては小胞を効率よく透過できるオリゴヌクレオチドを探索することを目的とし、様々なアンチセンス分子の培養細胞レベルでの薬効およびアンチセンス分子の臓器分布についてマウス個体レベルでの解析を進めた。その結果、ある配列においては肝臓への移行量が腎臓への移行量の10倍にも及ぶことを見出した。一般的にアンチセンス分子はそのほとんどが腎臓に移行するものとされていたが、配列によりその体内動態に大きな違いが生じることが明らかとなった。またそのようなアンチセンス分子については肝臓における薬効も他と比較しても著明な薬効を示した。他方で、アンチセンス分子のmRNA切断を触媒する能力が薬効に深く関わっていることを発見し、mRNAを効率よく切断するアンチセンス分子の開発に取り組んできた。本年度においては、apoB mRNA上の1つの領域を標的としたアンチセンス分子を150種設計・合成し、これらの結合力、mRNAの切断速度を網羅的に評価した。予想通り結合力と切断速度には一定の相関性が認められたが、特に興味深いことは、アンチセンス鎖内の局所的な結合力の大小が切断速度の大小を左右すると言うことである。すなわち局所的にBNA修飾を多数連続させた場合には、結合が強すぎるため、切断速度が低下し、結合力を弱めた場合にも切断速度は低下することが見出された。これまでの研究から、体内動態を改善するオリゴヌクレオチド配列を見出し、さらにmRNAを効率よく切断するアンチセンス分子設計を組み込むことで、アンチセンス医薬の投与量に占める実効量を実際に改善し得ることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の当該年度の当初研究目的として、細胞膜を透過するオリゴヌクレオチドの探索およびターンオーバー速度をスクリーニングするための評価系の最適化と、スクリーニング評価という2つの目標を掲げていた。数種のアンチセンス分子を設計し、それぞれについてin vitroおよびin vivoにおいて活性を評価した結果、ある塩基配列を有する分子においては肝臓への移行量が腎臓への移行量の10倍にも及ぶことを見出した。またそのようなアンチセンス分子については肝臓における効果も他と比較しても著明な薬効を示した。他方で、apoB mRNA上の1つの領域を標的としたアンチセンス分子を150種設計・合成し、これらの結合力、mRNAの切断速度(ターンオーバー速度)を網羅的に評価し、アンチセンス鎖内の局所的な結合力の大小が切断速度の大小を左右すると言う規則を見出した。 これらの成果は、当初目的を満足するものであり、さらに先行して動物実験での評価まで進めた点で当初計画以上の進展が得られているものと考える。加えて、配列の違いによるアンチセンス分子の取り込み効率の違いに興味を持ち、取り込みメカニズムに関する研究を並進させており、アンチセンス分子の利用率を高めることに繋がるものと期待している。
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今後の研究の推進方策 |
配列の異なるアンチセンス分子は肝臓への移行量も異なり、それに付随して薬効も異なることを見出した。このなかでも特に優れた肝臓移行性を示すアンチセンス配列が得られたので、この配列のどのようなモチーフが取り込みを加速させているのかについて精査を進める。さらに肝臓細胞への取り込みメカニズムを調べるべく低分子化合物やshRNA等を用いた取り込みメカニズム評価を進めていく予定である。他方で、アンチセンス分子の結合力とin vitroターンオーバー速度の関係から、至適な結合親和性の範囲が見出されてきた。本研究では、さらにこれが培養細胞やin vivoにおける薬効とも正相関するかどうかについて検討を進める。アンチセンス効果の定量的評価についてはApoB mRNAの定量並びに分泌されたApoBのタンパク質発現量の定量などによって評価する。その他、配列や標的遺伝子一般性についても検討を進める予定である。 上記研究で得られた高活性アンチセンスを組み合わせた分子のアンチセンス効果についても細胞及び動物を用いて評価を進める。
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