Neuron保護作用を持つNecdin蛋白質自身のSUMO化や、Necdin結合蛋白質のSUMO化調節機構について解析を行った。平成24年度にNecdinのSUMO化リジンとSUMO化E3 ligaseの同定が完了し、その結果、Necdinが核膜構成因子と強く相互作用していることが分かった。平成25年度は、核膜におけるNecdinを介したSUMO化制御機構に重点を置いて検討した。まず胎生14.5日のマウス前脳を免疫染色したところ、Necdinは幹細胞が多く存在する脳室周辺の細胞において、主に核膜と細胞質に局在していた。一方分化したニューロンの層ではNecdinは核に強く局在しており、核膜から移動していた。この結果は神経幹細胞をマウス胎仔から単離培養し、ニューロンへ分化させた際の結果と一致していた。さらに免疫沈降の結果から、Necdinは神経幹細胞において核膜孔複合体構成因子のRanBP2、RanGAP1、そしてSUMOと複合体を形成していることが分かった。RanGAP1はSUMO化基質として最初に同定された蛋白質であり、核輸送だけでなく細胞分裂の制御にも非常に重要な役割を果たしている。また、RanGAP1はこれまでにどのような条件においても、脱SUMO化や分解を受けることがないことが報告されている。しかし、神経幹細胞を神経細胞へ分化させるとRanGAP1は脱SUMO化を受け分解を受けることが分かった。そこで、この現象にNecdinが関与するのではないかと考え、まず培養細胞にNecdinと脱SUMO化酵素を発現させウエスタンブロットを行うと、RanGAP1はNecdin存在下でのみ脱SUMO化を受け分解を受けていた。さらにNecdin欠損マウス由来の神経幹細胞におけるRanGAP1のSUMO化レベルは、野生型細胞よりも上昇していた。これらの結果は、Necdinが神経幹細胞の核膜孔において、RanBP2、RanGAP1と複合体を形成し、RanGAP1のSUMO化を制御することで、ニューロンへ分化する際に必要な細胞分裂の停止や、転写因子等の核輸送に寄与する重要な知見であると考える。
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