研究課題/領域番号 |
24890105
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡本 徹 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (80628595)
|
研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
|
キーワード | アポトーシス / ウイルス / Bcl-2 |
研究概要 |
これまで、フラビウイルスを始めとするRNAウイルスにおける細胞死はERストレスにより誘導されるBH3-onlyタンパク質が起点となり引き起こされていると考えられている。最近、我々は日本脳炎ウイルス感染によって、Mcl-1が分解されていることを発見した。この分解はプロテアソーム阻害剤で回復した事から、Mcl-1が何らかの作用でプロテアソームにより分解されていることが考えられた。それを検証するためにBcl-xLを標的とするshRNA発現細胞を樹立したところ、顕著に日本脳炎ウイルスにおいて細胞死が誘導された。さらには、Bcl-xL阻害剤であるABT-737を処理しても日本脳炎ウイルス感染によりアポトーシスが誘導された事から、日本脳炎ウイルス感染により宿主細胞の中のMcl-1は分解を受け、その生存をBcl-xLに依存している事が明らかとなった。Mcl-1の分解は日本脳炎ウイルス感染に特異的な現象ではなく、同じフラビウイルス科に属するデング熱ウイルスやC型肝炎ウイルス感染によっても見られた事から、少なくともフラビウイルス科に共通する現象である事が分かった。さらに、これらの現象の生体内での重要性を調べるため、日本脳炎ウイルス感染マウスにABT-737を投与し、マウスの生存を見てみると、有意にABT-737処理により生存が亢進した。これらの結果から、フラビウイルス科に属するウイルスが感染すると、何らかの影響でMcl-1が分解され、アポトーシスが亢進することが分かり、Bcl-xL阻害剤がウイルス感染における致死から逃れる事ができる事が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウイルス感染によるMcl-1の分解はVSV, デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルスをいった様々なウイルス感染に共通して起きる事を示す事ができ、さらにMcl-1の分解を利用したBcl-xL阻害剤のマウス個体への投与により、日本脳炎ウイルス感染による延命に効果があった事から、その重要性が、in vitro, in vivoの両方で証明することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
Mcl-1分解は様々な抗ガン剤刺激、UVや翻訳阻害と言った刺激により誘導される事が報告されているが、その分子メカニズムは不明な点が多い。これまでの研究により、ウイルス感染によりMcl-1が分解され、Bcl-xLの発現に依存すること。さらにBcl-xLが阻害されると顕著に細胞死が誘導されることが分かった。さらにマウス個体への実験によりBcl-xL阻害剤によりウイルス感染への防御が観察できたことから、Mcl-1の分解は宿主の防御反応の一つである事が示唆できた。今後の研究計画を遂行しつつ、Mcl-1の分解メカニズムについても何らかの知見を得たいと考え、その分子メカニズムを検討して行こうと考えている。
|