昨年度、日本脳炎ウイルス感染によってMcl1というアポトーシスを抑制するタンパク質が顕著にプロテアソームによって分解を受けることを示した。本年度は、より詳細にMcl1の分解の意義を理解するために、CRISPR/Cas9という遺伝子破壊技術を用いてヒトの肝癌由来細胞株であるHuh7で、Mcl1欠損細胞とBcl-x欠損細胞を作製し、各ウイルス感染における細胞死の変化を調べた。すると、日本脳炎ウイルス感染では、Bcl-x欠損細胞で顕著に細胞死が亢進したが、Mcl1欠損細胞では野生型のHuh7と同程度だった。Bcl-x欠損細胞では、その生存がMcl1に依存しているため、日本脳炎ウイルス感染によってMcl1が分解され、死に至ったと考えられた。同じフラビウイルス科に属するC型肝炎ウイルスにおいても同様にBcl-x欠損細胞では細胞死が顕著に見られたことから、ウイルス感染におけるMcl1の分解は様々なウイルスで共通して見られる現象であるかもしれない。
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