今回の研究成果から、Aryl hydrocarbon receptor (AHR) 依存的に発現上昇するmiR-132/212 clusterがTh17細胞の分化に寄与している事が解明された。また、Th17細胞が発症の主因であると考えられている実験的自己免疫性脳脊髄炎 (EAE) をmiR-132/212 cluster欠損 (KO) マウスにおいて誘導した結果、コントロールマウスに比べ、有意に症状が抑制されていた。EAEを誘導したmiR-132/212 cluster KOマウスにおいてはTh17細胞が低下しており、in vitro、in vivoの両面からmiR-132/212 clusterがTh17細胞の分化において重要である事が明らかになった。更に、マイクロアレイによる網羅的解析により、コントロール細胞に比べ、miR-132/212 cluster KO細胞においてBcl-6が高発現している事が示された。Bcl-6はTh17細胞の分化に抑制的に働く因子の一つとして知られており、Bcl-6 mRNAの3'UTRを用いたルシフェラーゼアッセイにより、miR-212との相互作用が認められた。以上の結果から、AHR依存的に誘導されるmiR-132/212 clusterはBcl-6の発現抑制を介してTh17細胞の分化を促進している事が考えられた。関節リウマチや多発性硬化症などの自己免疫疾患の発症にはTh17細胞が深く関与していると考えられている。本研究の成果から、miR-132あるいはmiR-212のアンチセンスオリゴヌクレオチドなどを阻害剤として用いる事が自己免疫疾患における新たな治療方法の確立に繋がる可能性が示された。
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