研究課題/領域番号 |
24890112
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
一井 倫子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30633010)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 造血環境 |
研究概要 |
本研究は、Wnt/decorinを介した、間接的な造血幹細胞制御のヒト骨髄内における役割を明らかにすることを目的にしている。そのために、1)decorin発現を制御した間葉系細胞を用いた in vitro解析系 2)ヒト大腿骨頭から単離可能な間葉系細胞・造血幹細胞を使用したin vivoヒト造血微小環境モデル を確立し、その上で、Wnt/decorin経路の役割解析を進める計画としている。 2012年度においては、まず上記実験系の確立を行った。レトロウイルスベクターを用いたWnt3a、Wnt5a、Dkk1を強制発現したマウス・ストローマ細胞株(OP9) に加えて、decorinを強制発現した細胞株を作成した。いずれの細胞株もstable細胞化されており、decorin発現を制御した間葉系細胞を用いた in vitroでの解析方法は、安定した実験系として確立する事が出来た。さらに、これらの細胞株とマウスおよびヒト由来の造血幹細胞の共培養を行い、decorinが幹細胞を支持する能力を持っている事を明らかにした。 ヒト間葉系幹細胞の皮下移植を用いた、免疫不全マウス内の異所性ヒト骨髄モデルの確立を目的とした実験に関しては、コラゲナーゼ処理したヒト大腿骨頭から溶出した間葉系細胞から、CD45-CD271+間葉系幹細胞を単離する系が確立された。免疫不全マウスへの皮下移植による異所性のヒト骨髄再構築の実験系に関しては、現在そのキャリアーの選択を行っているところである。具体的には、フィブリノーゲン/トロンビン、マトリゲルを用いた移植を行ったが、いずれも解析や造血幹細胞の追加移植に十分なレベルでの生着が得られなかったため、現在、hydroxyapatite/tricalcium phosphate をキャリアーとした移植系の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の計画で予定された実験系の確立については、予測された範囲内での進捗状況を維持している。
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今後の研究の推進方策 |
申請時に予測された通り、大腿骨頭細胞を用いた皮下移植による異所性骨髄生着に関しては、実験系確立が難航しているため、ホストマウス大腿骨の骨髄内への直接移植を行う方法についても検討を開始している。 また、本研究において、最終的には、正常細胞だけでなく、白血病幹細胞に対するWnt/decorin経路の影響を解析する事により、造血器腫瘍の新しい治療戦略確立に向けた検討を進めていく計画としているが、decorinの骨髄腫増殖に関連する論文が報告されているため、多発性骨髄腫における造血幹細胞や病勢に対する影響についても評価する実験を計画している。
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