我々は、これまで意外にも炎症性のヘルパーTリンパ球であるTh1細胞投与により、脊髄損傷後の機能回復が促進されることを示した。そこで脊髄損傷後に集積するヘルパーTリンパ球の性状を詳細に解析して、Th1細胞投与あるいは他の方法、すなわち薬剤や抗体を用いてTh1偏向させることで治療効果があるかを検証したいと考えた。その結果、損傷脊髄には急性期、および亜急性期にヘルパーT細胞およびγδT細胞が浸潤することを確認した。しかし、マクロファージなどの単球系細胞に比べると数百ー数千と桁違いにTリンパ球は少ないため、細胞内サイトカイン染色をこころみたが、多くの細胞が死んでしまい詳細な分泌サイトカインのプロファイリングには至らなかった。現在損傷した中枢神経にて主にミクログリアから分泌されるRGMaを中和抗体で阻害すると神経細胞死が抑制されることを予備的に発見している。ここで合わせて、前述のリンパ球の分泌サイトカインの性状解析の課題を克服して、RGMaを抑制することにより、集積リンパ球の性状がどのような影響を受けるのかを検証する予定である。
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