研究課題/領域番号 |
24890114
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤田 幸 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60631215)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 中枢神経 |
研究概要 |
種々の遺伝子の発現に変化をもたらすゲノムの立体構造の破綻は、正常な中枢神経回路の形成を妨げるのではないかと考えられる。この仮説を、ゲノムをループ状に束ねて、遺伝子の転写を調節することが知られている、コヒーシン複合体に着目して検証する。コヒーシン複合体は、離れたエンハンサーを空間的にプロモーターの近傍に配置し、適切な相互作用を可能にすることで、遺伝子の転写を調節する。ヒトのコヒーシン関連遺伝子の変異により引き起こされる疾患であるCornelia de Lange Syndrome (CdLS)では、精神遅滞などの分化発生異常を伴うことが知られている。本研究では、中枢神経系におけるコヒーシンの機能低下が、ゲノムの転写構造を変化させ、発生過程における中枢神経回路の形成異常もたらすという仮説を検証することとした。具体的には、中枢神経系におけるコヒーシンの機能低下により、中枢神経回路形成過程において、神経軸索の刈り込みが抑制されるか、調べることとした。 本年度は、野生型マウス、Smc3ヘテロ欠損マウスの上丘に、逆行性トレーサーであるgreen fluor microsphere (GFM)を注入し、皮質脊髄路を構成する神経細胞の刈り込みが阻害されているか、検証した。しかし、刈り込みの阻害を検出することが難しかった。ヘテロ欠損マウスを使用していることが原因の一つと考えられた。現在、Smc3 Flox/FloxマウスにAAV-Creを感染させ、神経回路特異的にSmc3を欠損させることを検討中である。また、野生型マウス、Smc3ヘテロ欠損マウスの大脳皮質における遺伝子発現変化をRNA-seqで検証した。その結果、発現が顕著に異なる遺伝子群が同定された。現在、これらの遺伝子について、コヒーシンとの関係性を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた方法で、Smc3ヘテロ欠損マウスにおける神経軸索の刈り込み阻害を検出することは難しかったが、Cre-loxPシステムを用いることで、対応可能と考えられる。次年度に予定していた、遺伝子発現変化の解析は今年度中に着手している。上記の理由から、本研究は順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた方法で、Smc3ヘテロ欠損マウスにおける神経軸索の刈り込み阻害を検出することは難しかった。この原因の一つとして、ヘテロ欠損マウスを使用していることが推察される。申請者は、Cre-loxPシステムを用いて神経回路特異的にSmc3を欠損させることが可能であると考えている。具体的にはCreを発現するアデノ随伴ウイルス (AAV-Cre)を作成し、大脳皮質第V層の細胞に局所的に感染させ、ターゲットとしている皮質脊髄路で、特異的にSmc3を欠損させる。AAV-Creは既に作成済みである。
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