オッセオインテグレーションを制御するエピジェネティック機構の解明を行うために、まずチタン上での細胞培養が可能であるか検討した。その結果、In Vitro実験系において骨芽細胞様細胞であるMC3T3-E1細胞が正常に培養可能であることを確認した。次にチタン上での骨芽細胞分化を検討した。培養日数が長期間になるほど骨の分化マーカーであるI型コラーゲン、オステオカルシン、アルカリフォスファターゼの発現量は増加した。またオッセオインテグレーションに対する喫煙の影響を調べるためにニコチンを細胞培養液に添加し骨芽細胞分化の検討を行ったところ、ニコチン添加群は培養日数が短期間では骨の分化マーカーの発現量は増加していたが、長期間にわたるほど発現量は減少傾向を示した。 さらに様々な因子を含む生体環境に近付けるために骨形成誘導たんぱく質であるBMP2を過剰発現し、チタンプレート上でのBMP2の関与を検討した。その結果、チタン単独、BMP2単独の場合よりもチタン上にBMP2を過剰発現させた細胞において骨の分化マーカーの発現量が増加した。これはチタンがBMP2となにかしらの相乗作用を示し、骨芽細胞分化を促進したと考えられる。また、それらにニコチンを添加し同様の実験を行ったところ、骨の分化マーカーの発現量は減少した。以上のことから、チタン、BMP2、ニコチンの単独、または相互作用で骨芽細胞分化においてどのようなヒストン修飾が行われているかを検討するためにChip assayを行った。実験条件などによりこれら全てのデータを測定することは無理であったが、BMP2単独に比較してTi+BMP2ではヒストン3のリジン4の3重メチル化が促進されていることが示された。今後もヒストン修飾部位についての検討が必要と考える。
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