加齢黄斑変性は加齢による網膜色素上皮細胞(RPE)の機能異常が原因で発症する。RPEの機能とは活性酸素除去能、サイトカイン産生能、バリア機能、貪食能等であり、加齢黄斑変性では、RPEの機能異常によって網膜の恒常性が破綻し、老廃物の蓄積、血管新生、網膜障害が起こり視力が低下する。本研究ではAMPKに着目し、RPEの機能異常におけるAMPKの役割を解明することを目的とし研究を行った。 加齢黄斑変性では、酸化ストレスによるRPEの機能異常から慢性炎症が誘導され、血管新生やRPEの異常増殖や遊走、線維化が起こる。そこでRPEの細胞増殖におけるAMPKの役割について検討し、RPEの増殖因子に対してAMPKが抑制的な役割を果すことを明らかにした。次に炎症性サイトカインによるRPEの増殖、遊走、線維化に対するAMPKの役割について検討し、AMPKがこれらの反応を阻害することを明らかにした。また酸化ストレスがRPEに及ぼす影響を検討するために、酸化ストレス負荷モデルの確立に取り組んだ。その結果、急性および慢性酸化ストレスモデルを確立することに成功した。しかし、RPEの機能の一つである老廃物の消化能について検討した結果、ドルーゼンの主成分のアミロイドβの分解酵素であるネプリライシンの発現については急性酸化モデルでは変化を見いだせなかった。そのため加齢黄斑変性の病態を反映した実験系としては慢性酸化モデルを用いる必要があると考えた。さらにRPEの細胞機能を評価するための種々の実験法を確立した。本研究費の期間内に計画した全ての目的を達成するには至らなかったが、RPEの細胞増殖、慢性炎症による細胞遊走、線維化におけるAMPKの役割について解明することができた。また、今後研究を進めていく上で基盤となる実験系の確立に成功した。現在、RPEの細胞機能に慢性酸化ストレスが及ぼす影響およびAMPKの果たす役割について研究に取り組んでいる。
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