研究概要 |
本研究は炎症性中枢神経疾患モデルである実験的自己免疫性脳炎(experimental autoimmune encephalomyelitis; EAE)マウスに対して,ヒト抜去歯牙より採取した歯髄幹細胞(dental pulp stem cells; DPSCs)を経静脈的に全身投与し,その機能回復効果ならびに障害神経組織の再生効果を骨髄由来間葉系幹細胞(bone marrow-derived mesenchymal stem cells; BMMSCs)と比較・検討する事を目的としている. 本年度はボランティア患者より抜去した下顎智歯歯髄よりDPSCsを単離培養し,表面抗原の発現をBMMSCsと比較検討した.すなわち,幹細胞マーカーとして用いられる,Stro-1, CD146, CD73, CD105,SSEA4の陽性度に両幹細胞間で有意差は無く,また,CD34, CD45などのネガティブマーカーに於いても発現を認めなかった事から,本研究に使用するDPSCsの幹細胞としての純度はBMMSCsと同程度である事が判明した. 一方で,免疫抑制能の評価として,生体内で免疫寛容獲得の指標となる抑制性T細胞の分化誘導および,炎症性Th17細胞の分化抑制作用をin vitroにてT細胞とそれぞれ幹細胞を共培養する事で比較検討した.その結果,BMMSCs,DPSCsともに抑制性T細胞の分化誘導および炎症性Th17細胞分化抑制効果を示したが,抑制性T細胞の分化誘導効果,炎症性Th17細胞分化抑制効果のどちらにおいても,BMMSCsはDPSCsと比べてより高い効果を示す結果となった. 今後はこれらの結果をもとに,EAEマウスに幹細胞を投与する事で,免疫寛容の観点から治療効果を比較検討するだけでなく,障害神経の治癒効果についても検討を進めていく予定である.
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