研究概要 |
周術期管理医療における歯科的アプローチが必要とされて久しいが,その詳細な治療効果は未だ検討されていない。曽我らの研究によると,超急性期病院の歯科初診患者の15%程度は医科系診療科等からの院内紹介患者であった。これは,超急性期病院における歯科的ニーズの高さを示しているといえる。そのため我々は,第一に周術期患者の口腔内の特徴を明らかにすることを目的として,消化器領域等の手術患者を対象とした口腔内の実態調査を開始した。本研究は,岡山大学疫学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。まず予備調査として,73名の食道癌患者を対象とした診療録ベースの調査を行った。すなわち,厚生労働省平成23年度歯科疾患実態調査の調査項目に準じて口腔環境の実態調査(残存歯数とその状態等)を後向きに行い,その結果を全国調査と比較検討した。 その結果,性差,年齢階層別患者分布を考慮しない予備的な検討においては,食道癌手術患者では現在歯が有意に少なく(Welch's t test, p=0.151),処置歯が有意に少ない(student t test, p=0.00047)一方,喪失歯は有意に多かった(student t test, p=0.005)。今後は,調査対象を拡大し,疾患別に周術期患者の口腔内を把握するとともに栄養摂取経路を検討する予定である。 また,患者の経口摂取能力の測定に備え,専門医からその測定術式に関して指導を受けた。すなわち,評価者間の評価能力の均質化を図ると共に,その評価者間の信頼性についてもあらかじめキャリブレーションを行い,評価者の内視鏡操作の技術的向上ならびに評価者間の評価能力の向上が得られた。 加えて,周術期における早期の経口摂取を目的とした機能回復療法の実践例として,食道がん周術期において歯牙欠損部の機能回復を行い,栄養改善を行った症例について学会での報告を行うとともに誌上発表した。
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