周術期管理医療における歯科的アプローチの必要性が提唱されて久しいが,その詳細な治療効果は未だ検討されていない。そこで本申請では,周術期における口腔内管理方法の新規開発ならびに介入効果の検証を目的に,その予備調査として消化器領域等の悪性腫瘍の手術対象患者の口腔内の実態を明らかにした。調査の結果,岡山大学病院食道癌患者は全国調査結果と比較して,現在歯および処置歯が有意に少なく,喪失歯が有意に多いことが明らかとなった。同時に,食道癌の危険因子である飲酒・喫煙といった生活習慣は歯周病の危険因子でもあり,危険因子を同一とすることが理由として考えられた。現在,昭和大学と多施設共同研究を行い,更なるデータの収集を行っている。 さらに,食道癌術後回復期において体重増加みられなくなった時期に義歯を装着し,経口栄養摂取の促進が可能となった症例を経験した。そのため,体重回復が咬合支持回復と時期を同じくして起こったことから,早期の咬合支持回復の重要性について誌上報告を行った。 本申請研究より得られた知見を広く発信することを目的とし,周術期管理医療等における歯科介入のあり方を議論するシンポジウム(第2回周術期の高度医療を支える歯科医療を具体的に考えるシンポジウム,2014年1月26日岡山,セッションタイトル:東北大学病院での支持療法における歯科の役割,新潟大学医歯学総合病院のがん口腔管理)を開催した。開催したシンポジウムでは,全国の周術期口腔機能管理の実務者と情報交換を行うとともに,周術期等の口腔内管理の開発及び介入を推進し,その効果の検証をさらに進めるための議論を行い,知識共有を深めた。
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