研究課題/領域番号 |
24890137
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
見前 隆洋 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (00634081)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 癌浸潤 / プロテオミクス |
研究概要 |
本年度の実績概要を以下に研究予定であった各項目に沿って報告する。 1、乳癌細胞株の浸潤突起部、ヒト乳癌検体の浸潤部での再現性確認および臨床病理学的解析 (1)浸潤突起特異的候補分子の乳癌細胞株における再現性確認:既に同定されている候補分子の突起への局在を浸潤性乳癌細胞株において調べる。この際には細胞蛍光免疫染色を行い、共焦点顕微鏡による観察を行う。これにより同定した候補分子が浸潤突起 部に特異的であることを確認する。→既に確認済みのものの他にも再現性を確認出来る分子を同定可能であった。既に確認出来ていた分子に関する研究内容は、エキシマーレーザーと2D-DIGE法を用いた浸潤に関わると考えられる突起部分のプロテオミクス技術内容とともに平成24年度にその方法論を中心とした論文化に成功している(Laboratory Investigation)。 (2)ヒト浸潤性乳管癌組織における浸潤部にての候補分子の発現を確認:上記の実験にて乳癌細胞株で再現性が確認された分子に関してヒト乳癌検体において免疫組織学的染色にて、浸潤部で高発現を認めるかに関して確認する。→新たに(1)で同定された分子に関して行ったが、乳癌の中でも特殊な組織型において浸潤部で有意な発現上昇が認められた。 (3)浸潤突起特異的候補分子のタンパク発現パターンと臨床病理学的背景との関係を検討:浸潤突起特異的候補分子の発現パターンとERやHER2ステータスといった既知の生物学的特性を含めた臨床病理学的背景との関係を解析し、悪性度規定因子の同定を模索する。→現在この項目に関しては十分に行えていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定をしていた以下の3項目のうち、2項目は一部で解析に成功しており、この点に関しては順調に進んでいると言える。一方で最後の(3)の項目に関しては十分と言えない進行程度であるため、おおむね順調という評価としている。 1、乳癌細胞株の浸潤突起部、ヒト乳癌検体の浸潤部での再現性確認および臨床病理学的解析 (1)浸潤突起特異的候補分子の乳癌細胞株における再現性確認 (2)ヒト浸潤性乳管癌組織における浸潤部にての候補分子の発現を確認 (3)浸潤突起特異的候補分子のタンパク発現パターンと臨床病理学的背景との関係を検討(悪性度規定因子の同定)
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今後の研究の推進方策 |
今後は現状で解析の進んでいる分子の更なる追加実験や、その他の候補分子の検索を進めていき、癌浸潤機構の解析をさらに深めていく予定である。具体的内容は以下にお示しする。 1、昨年度十分に行えなかった平成24年度予定であった(3)浸潤突起特異的候補分子のタンパク発現パターンと臨床病理学的背景との関係を検討:浸潤突起特異的候補分子の発現パターンとERやHER2ステータスといった既知の生物学的特性を含めた臨床病理学的背景との関係を解析し、悪性度規定因子の同定を模索する。以上に関する検討を行う。 2、浸潤、悪性度を規定する候補分子の機能解析 (1)有望な分子に関して浸潤・転移に関する機能解析:前年度の結果から悪性度を規定する可能性が示唆された分子に関してその後の解析を進める。この時、複数候補があれば特に(a) 発現の変化が大きい、(b)機能性蛋白と推測される、(c) 浸潤・悪性化と関連する機能が示唆される、(d) 細胞の運動性への関与が示唆される、の観点から解析すべき分子をさらに絞り込む。分子生物学・細胞生物学及び実験病理学の手法を駆使してその分子の機能を明らかにする。 (2)個別化治療のターゲットになるか否かの検討(新規治療標的の模索):上記実験で浸潤に関わることが確認された分子に関しては抑制実験(例えば浸潤傾向の強いヒト乳癌細胞株MDA-MB-231などを用いて)などを追加し、ヒト乳癌において新規治療標的となるか否かの可能性を模索する。 以上を基本に研究を進めていく予定としている。
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