平成24年度に引き続き、P.gingivalis歯性感染によるNASH病態増悪メカニズムを解明することを目的とし、①in vitroにおいてLPS以外のP.gingivalis由来病原因子であるフラジェリンおよびCpGODNによる刺激に対する肝構成細胞(ヒト肝細胞、ヒト肝筋線維芽細胞、ヒトマクロファージ)のサイトカインmRNA発現を検討した。②またin vivoの実験で、高脂肪食誘導脂肪肝モデルマウスにP.gingivalis歯性感染処置を行い、根尖病巣を誘導し、4週間後、1群に感染歯抜去処置による根尖病巣の除去(歯科処置)を行い、歯科治療群とした。治療後2週目の肝臓を回収し、1群に治療による肝臓の病理組織学的変化およびサイトカイン産生の変化を調べ、非治療群と比較検討した。 その結果、①ヒト肝細胞、肝筋線維芽細胞およびマクロファージにおいて、フラジェリンやCpGODN刺激でもIL-1β、IL-6などの炎症性サイトカインmRNA発現上昇が誘導されたが、細胞および病原因子により反応性の違いが見られた。②治療群では、組織学的にマクロファージ、好中球の炎症細胞浸潤の減少を認めた。組織学的に良好な改善の見られた2例では炎症性サイトカイン(IL-1β)およびインフラマソーム関連遺伝子(NLRP3)mRNA発現の顕著な減少が認められた。 以上の結果より、歯周病原細菌由来の様々な因子の誘導する自然免疫反応はNASHの病態進行に関わることが示唆された。また、歯科治療による感染巣の除去はNLRP3-IL-1β系の抑制を介し、NASHの病態を改善する可能性が示唆された。
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