研究課題/領域番号 |
24890139
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山崎 佐知子 広島大学, 病院, 歯科診療医 (00632001)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 人工多能性幹細胞 / 再生歯学 / 遺伝子疾患 / 細胞培養 |
研究概要 |
本研究では、遺伝性疾患の発症メカニズムを明らかにし、その診断・治療法を確立するため、遺伝性疾患患者由来iPS細胞をフィーダーレス無血清培養系にて樹立し機能解析を行い、疾患モデル系を確立することで、発症メカニズムの解明および治療法の開発を行うことを目的としており、以下のとおり実施した。 本年度はヒトiPS細胞の未分化性および多分化能を維持可能な無血清培養法の改良およびヒトiPS細胞誘導法の改善について検討を行った。その結果、無血清培地にてフィーダー細胞を用いず安定して維持可能な条件を確立すると共に、継代後の未分化能および多分化能を有することを確認した。また、従来の樹立法ではレトロウイルスを用いて初期化遺伝子を導入し、ヒトiPS細胞を樹立していたが、レトロウイルスの使用により細胞のゲノムへランダムな遺伝子挿入が生じるため腫瘍化のリスクがあったため、センダイウイルスベクターを使用しゲノムDNAへの挿入のない安全性の高いiPS細胞の作製、ならびに動物由来成分を含まないdefinedでかつsimpleな培地を用いたiPS細胞作製法について検討を行った。 また樹立した鎖骨頭蓋異形成症(CCD)患者由来疾患特異的iPS細胞を用いた発症メカニズムおよび原因究明についても検討を行った。CCDはRunx2の変異により発症する常染色体優性遺伝であり、樹立した疾患特異的iPS細胞を用いて、骨・軟骨への分化誘導を行うことで、各種遺伝子発現に有意差があることを明らかにしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、無血清培地にて樹立されたCCD患者由来疾患特異的iPS細胞において、未分化性および多分化能の検討を行い、骨・軟骨への分化誘導時に健常人由来iPS細胞と比較して分化効率に差異があることが明らかとなった。また本無血清培養系を用いて得られたヒトiPS細胞はフィーダー細胞や血清添加培地を用いることなく樹立可能であったが、同培地を改良し、当初予定していたヒトiPS細胞樹立後の継代・維持に有利な添加因子の検討を行い、長期間未分化能および多分化能を維持可能な条件を確立した。また、これまではレトロウイルスを用いて初期化遺伝子の導入を行い、iPS細胞の樹立に成功したが、ゲノムDNAへの遺伝子挿入のおこらない安全かつ簡便なセンダイウイルスベクターを使用した遺伝子導入法を用いての無血清培養条件下でのiPS樹立を行うことに成功し、今後同条件にて樹立したiPS細胞の継代・維持および未分化性および多分化能の維持等について検討を行う。また、CCD患者由来疾患特異的iPS細胞の変異遺伝子配列をターゲットとした遺伝子改変技術を用いてゲノム編集を行い、変異遺伝子の正常化し、遺伝子改変したiPS細胞を用いた発症メカニズムの究明および治療法の開発研究について検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はゲノムDNAへの遺伝子挿入のおこらないセンダイウイルスベクターを用いた条件で、無血清培地を用いてフィーダー細胞を使用せず確立したヒトiPS細胞を用いて、同細胞の継代・維持に必要な条件を検討するとともに、同条件にて樹立したiPS細胞の継代・維持および未分化性および多分化能の維持等について検討を行う。また、CCD患者由来疾患特異的iPS細胞の変異遺伝子配列をターゲットとした人工酵素TALENを用いたゲノム編集を行い、変異遺伝子の正常化および改変細胞を用いた発症メカニズムの究明および治療法の開発研究について検討を行う予定である。また、引き続き他の遺伝子疾患患者由来iPS細胞の樹立を目指すとともに、細胞バンク化を推進する。特定の細胞系列への効率的な分化誘導法について検討を行う予定である。またこれまで得られた結果をもとに難病の原因究明や治療法の開発を目指した疾患研究、医薬品の安全性試験などへの利用、細胞製剤の開発などの創薬研究、神経や血液・組織や臓器の機能修復や再生を目指した再生医療への応用を推進する。
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