研究概要 |
本研究では、遺伝性疾患の発症メカニズムを明らかにし、その診断・治療法を確立するため、遺伝性疾患患者由来iPS細胞をフィーダーレス無血清培養系にて樹立し機能解析を行い、疾患モデル系を確立することで、発症メカニズムの解明および治療法の開発を行うことを目的としており、以下のとおり実施した。 ヒトiPS細胞の未分化性および多分化能を維持可能な無血清培養法の改良およびヒトiPS細胞誘導法の改善について検討を行い、無血清培地にてフィーダー細胞を用いず安定して維持可能な条件を確立すると共に、継代後の未分化能および多分化能を有することを確認した(Yamasaki S, et al. PLoS ONE 2014; 9: e87151にて発表)。 また、センダイウイルスベクターを使用しゲノムDNAへの挿入のない安全性の高いiPS細胞の作製、ならびに動物由来成分を含まないdefinedでかつsimpleな培地を用いたiPS細胞作製法について検討を行い、その方法を確立した(論文投稿中)。さらに、樹立した鎖骨頭蓋異形成症(CCD)患者由来疾患特異的iPS細胞を用い、骨・軟骨細胞系列へ分化誘導を行い、健常人由来iPS細胞と比較検討を行った。CCDの原因遺伝子Runx2は軟骨細胞分化、破骨細胞分化、歯の発生に重要な因子であり、CCD患者由来細胞では分化誘導時にRunx2およびColl10A1両遺伝子発現の有意な発現低下を認めた。また、試料提供を受けたCCD患者はRunx2 Exson3のミスセンス変異を認めるため、(R225Q、674G>A)を正常化する人工ヌクレアーゼ(TALEN)の構築を行った。現在、TALENを用いてCCD-iPS細胞のゲノム編集行い、変異遺伝子配列を正常化した細胞の取得を目指している。
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