研究課題
我々は、PUFA の認知機能を含めた高次脳機能に及ぼす影響と、その制御機構を解明する鍵として、脂肪酸結合蛋白質(FABP)を見出した。FABPは、水に不溶な脂肪酸や脂肪酸代謝物の細胞内取り込み・輸送・代謝の調節を介して、様々な細胞機能に関わっていると考えられている。中枢神経系の神経細胞には、PUFAに親和性が高いFABP3が特異的に発現する。FABP3遺伝子欠損(KO)マウスでは認知・情動行動異常が起こる。さらにFABP3は、外界からの情報統合を司る前部帯状皮質に高発現し、GABA性の抑制性神経において、特徴的な発現を示す。そこで本研究では、FABP3が、神経細胞の脂質恒常性をいかに制御し、認知・情動行動にどのような生理的意義を持つのかFABP3 KOマウスの解析を中心に検証した。本研究では、以下の点を明らかにすることができた。前部帯状回皮質のパルブアルブミン(GABA作動性抑制性神経のマーカー)陽性細胞の約80%は、FABP3を発現していた。FABP3 KOマウスの前部帯状皮質では、GABA合成酵素のグルタミン酸脱炭酸酵素67(GAD67)のタンパク質及びmRNAが、野生型マウスと比べて有意に増加していた。GAD67の上昇と一致して、GABAの量も増加していた。一方、興奮性神経の神経活動を主に反映する、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼIIの活性は低下していた。一致して、興奮性アミノ酸のグルタミン酸の放出量が低下していることが、マイクロダイアリシス法を用いた解析から明らかになった。これらの結果は、FABP3 KOマウスの前部帯状皮質では、神経細胞の興奮と抑制機構のバランスが破たんし、その結果として、前部帯状皮質が重要な役割を果たす認知・情動行動に異常を来たした可能性を示唆するものである。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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