研究概要 |
小腸粘膜固有層(sLP)の抗原提示細胞のサブセットの分化を特異的に制御する転写因子は十分明らかではない。我々は、分化制御を担う転写因子として、canonical Notchシグナルに必須の転写因子RBP-Jに着目し、CD11c-Cre RbpjF/Fマウスにおいて管空側の抗原を取り込む機能を有したCX3CR1+ sLPC が欠損し、CD11clow sLPC が出現すること見出してきた。 本研究では、CX3CR1+ sLPCの分化に重要な責任受容体はNotch1,2であることを明らかにした。また、単球を試験管内において、Delta like-1 (Dll1)またはJagged1(Jag1)、およびM-CSF存在下で培養すると、リガンド非存在下と比較してCX3CR1+ sLPC様細胞を優位に誘導することができる。しかし、上皮細胞特異的なリガンド欠損マウスにより、腸管上皮細胞からのDll1, Jag1リガンドは必要ないことが示唆された。さらに、内在性Rbpjの欠損により出現したCD11clow sLPCは、CX3CR1+ sLPCと同じCX3CR1+単球から分化しているが、培養してもCX3CR1+ sLPCに変化しないことより、CX3CR1+ sLPCの前駆細胞ではないことが示唆された。CD11c-Cre RbpjF/FマウスにT細胞依存的大腸炎モデル、腸管寄生性線虫の感染モデルを適応したが、顕著な変化を認めなかった。よって、CX3CR1+ sLPCとCD11clow sLPCは細胞系列・機能が類似した細胞であると考えられるが、Notchシグナルの欠損により、異なる性質の細胞に分化が偏向したと推測できる。 以上の結果から、Notch1,2-RBP-JシグナルはCX3CR1+ sLPCの分化を制御することを通じて、腸管免疫応答の恒常性維持に寄与していると考えられる。
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