研究概要 |
平成24年度の概要 血管内皮特異的IRS1発現トランスジェニックマウス(EC-IRS1Tg)の確立;血管内皮特異的プロモーターには従来から知られているTie-1, Tie-2, eNOS, PECAM-1, P-selectinなどがあげられるがこれらのプロモーターは血球系細胞や平滑筋細胞にも発現することが明らかになっている。そこで申請者は血管内皮発現特異性が非常に高いVE-cadherinプロモーターを使用し、ヒトIRS1cDNAを組み込むことでtransgeneを作成した。培養糸球体内皮細胞に作成したtransgeneを過剰発現し、IRS1の発現を確認したところmock vectorをtransfectした細胞に比べてRNAレベル、蛋白レベル共、著明にIRS1が増加していた。また、作成したtransgeneを過剰発現した培養糸球体内皮細胞におけるインスリンシグナル(pAkt,peNOS)をSDS-PAGE,ウェスタンブロッティングで確認したところ、mock vectorをtransfectした細胞におけるインスリンシグナルに比べてそれらは著明に亢進していた。今後、確立するEC-IRS1 TgにおけるIRS1の臓器別発現確認を行う。さらに、本マウスをストレプトゾトシンで糖尿病に誘導、あるいは高脂肪食を与え、その後アルブミン尿の計測、腎病変の検討を行う。これらの実験で腎糸球体内皮細胞におけるIRS1の腎保護作用を示す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度内に、作成したEC-IRS1 transgeneの機能解析を行うことができた。つまりEC-cadherinプロモーターを用いることで従来用いられていた、血管内皮特異的プロモーターであるTie-1, Tie-2, eNOS, PECAM-1, P-selectinなどに比べてより血管内皮特異的に目的遺伝子を発現することが可能になったことは画期的である。さらに、マイクロビーズとICAM-1抗体複合体を用いることでラット糸球体からプライマリー培養糸球体内皮細胞を確立することができた。この細胞に作成したtransgeneを過剰発現させてIRS1の発現を培養糸球体内皮細胞において確認した。さらに、EC-IRS1 transgeneはインスリンシグナル(pAkt,peNOS)を培養糸球体内皮細胞内で上昇させるという機能も明らかにした。これらのことから来年度以降に確立するEC-IRS1 Tgにおける糸球体内皮細胞内インスリンシグナルの働きと腎保護作用が明らかになることが期待される。
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