研究課題/領域番号 |
24890155
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
宮下 武憲 香川大学, 医学部, 助教 (60363214)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 内耳生理 / メニエール病 / 耳科学 / 内リンパ水腫 / イメージング / イオン輸送 / 内耳 / 内リンパ嚢 |
研究概要 |
内リンパ嚢の機能、および その制御機構を明らかにすることで、内リンパ水腫をコントロールし、内リンパ水腫を病態とする疾患であるメニエール病の治療法が確立できる可能性に着目した。まず、クロライドイオンの輸送に重点をおいて調べた。内リンパ嚢内のリンパ液は、ナトリウムとクロライドが主イオンであり、ナトリウムについては多くのイオン輸送体の報告があるが、クロライドについては共輸送体もしくは交換輸送体以外は報告がない。そこで、クロライドチャネルについて発現の有無をRT-PCRで調べた。CFTRのみ発現が認められ、免疫染色にて内リンパ嚢中間部上皮細胞を中心にCFTRが発現していることが確認できた。これまで不明であったクロライド輸送系のひとつがCFTRであることがわかった。また、多くのCFTRはENaCと同じ細胞に発現していた。気道では、CFTRの活性化は、ENaCを介するナトリウム輸送の活性化を引き起こす相互作用があることが知られており、内リンパ嚢においても、CFTRはENaCと相互作用をしながらイオン輸送に関与していることが推定された。 内リンパ嚢は、近位部、中間部、遠位部の3部位に分けられ、連続した一層の上皮が内腔を覆っている。マウスの内リンパ嚢については、内耳が小さく摘出同定が難しいため、ほとんど報告がない。また、イメージングにおいて、内リンパ嚢の立体構造は大切な要素であり、マウス内リンパ嚢をwhole mountでイメージングする方法を開発した。リンパ管に発現するProx1をGFPで標識したProx1-GFPマウスの内リンパ嚢上皮細胞が特異的に標識されていることを発見した。側頭骨を脱灰し、レーザー顕微鏡で観察すると、内リンパ嚢全体が詳細に細胞レベルで観察可能であり、内リンパ嚢の立体イメージングを行った。更に、切片を作成し、内リンパ嚢の上皮細胞に普遍的に存在していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メニエール病に関して、これまで開発してきたlaser capture microdissection法にて純粋な内リンパ嚢上皮細胞由来のmRNAが集められるため、イオン輸送にかかわるイオン輸送体の発現の有無を調べた。新たに、クロライドチャネルのひとつであるCFTRのmRNA、蛋白レベルでの発現が確認できた。これは、ミッシングピースであったクロライド輸送系を探し当てたものであり、ENaCとともにイオン輸送系の主たる経路を形成していると考えられる。更に、イメージングには必須である立体構造を詳細に評価でき、更に内リンパ嚢が特異的にマークされた遺伝子改変動物を探し当てた。レーザー顕微鏡の新システムへの移行も順調にすすんでおり、さらに、まず蝸牛でのin vivo imagingに成功した。以上、おおむね予定通り達成できている。
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今後の研究の推進方策 |
メニエール病に関して、RE-PCR法にて内リンパ嚢上皮細胞由来のmRNAが集められるため、イオン輸送にかかわるイオン輸送体の発現の有無をスクリーニング的に調べていく予定である。FXYD6のように発現が確認されれば、イオン輸送体であればその制御因子候補を、制御因子であればその被制御因子を検索し、さらに、イオンイメージングを用いて定量的にイオン輸送への影響を調べる予定である。すでに、細胞間輸送にかかわるクローディンのいくつかのサブタイプのmRNA発現を確認し、研究を進めている。この方法で、新たな内リンパ嚢イオン輸送体、およびその制御因子を探索し、その候補について、in vivo ion imaging法および、パッチクランプ法、イオンイメージング法を用いて、その機能を調べ、そしてその制御系について調べていく予定である。また、内リンパ嚢イオン輸送体、およびその制御因子のインヒビターもしくはアゴニストのうち、血液内耳関門を通過することが確認できた薬剤について、これらの薬剤を経静脈投与し、内リンパ嚢直流電位、蝸牛内直流電位測定も実施可能である。内リンパ嚢直流電位、蝸牛内直流電位測定は、in vivo実験系の一つで、内リンパ嚢全体のイオン輸送、もしくは、蝸牛全体のイオン輸送を電位変化としてとらえることができる実験方法であり、イオン輸送体もしくは制御因子の内リンパ嚢における役割およびその制御系をin vivoで調べられる。同様に、in vivoでの内リンパ液の輸送能を調べる内耳静水圧測定法を用いて(Inamoto, Miyashita et. al, 2009)、イオン輸送体もしくは制御因子の内リンパ嚢における内リンパ液の輸送能における役割およびその制御系を調べる予定である。内リンパ嚢直流電位、蝸牛内直流電位の測定、内耳静水圧測定は、代表責任者の指導の下、分担者である稲本助教が担当する。
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