自己角膜輪部細胞が消失する難治性眼疾患に対する治療法の開発のため、移植医療に用いることが可能な角膜上皮細胞の培養に焦点をあてて研究をすすめた。まず、角膜上皮細胞が存在する環境であるニッチェの特性を調べるため、角膜中央の角膜実質由来細胞と角膜上皮幹細胞が存在する部位である角膜輪部由来の細胞を分けて培養し、特性を比較した。両者の培養細胞をフィーダーとして用いた場合、角膜上皮前駆細胞のコロニー形成率、および培養角膜上皮シートの形成は、角膜輪部由来細胞において有意に高かった。この角膜輪部細胞由来のフィーダーとしての有用性をInvest Ophthalmol Vis Sci. 2014;55:1453-62 に発表した。 さらに、移植に用いる角膜上皮細胞のためのフィーダー細胞の起源として、角膜皮膚細胞に着目して、ヒト由来皮膚細胞に不死化遺伝子、自殺遺伝子ならびにマーカー遺伝子を導入して、異生物種細胞混入の回避・十分数の確保・マーキングによる細胞の混入の確認ならびに選択薬剤による除去を可能にするヒト皮膚細胞由来遺伝子導入フィーダー細胞を開発した。フィーダー細胞自体に遺伝子導入を行うものの、遺伝子工学的な仕組みから、標的細胞に刺激を与えた後、フィーダー細胞自体は自殺遺伝子による除去によって取り除くことができるため、遺伝子導入自体も問題にならなかった。本フィーダー上で培養した角膜上皮細胞シートは良好な増殖・分化を示した。このヒト皮膚細胞由来遺伝子導入フィーダー細胞の有用性をInvest Ophthalmol Vis Sci. 2013;54:7522-31 に発表した。
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